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JRA顕彰馬選定投票制度のルールと仕組み

顕彰馬選定の時期が近づいてきました。毎年投票について不満を持つ声も少なくはありません。しかし、実際に意見を見てみると「何故この馬は選ばれない」などルールを理解していないケースも多々見受けられます。
そこで顕彰馬が現状どのようなルールで選定されるのか実際に2021年で使用された資料を交えて説明していきます。

顕彰馬を選定するための規則

日本中央競馬会顕彰規則と顕彰規則細則によって決められています。
この規則と細則は顕彰馬だけでなく、顕彰者(調教師・騎手)についても記載されているものです。
下記は一部抜粋したものになります。

 

 

選定方法

記者投票によって一定条件を満たした馬が顕彰馬に選定されます。
具体的な条件は次のとおりです。

投票資格

次のどちらかに該当する記者が投票することができます。

  1. 記者クラブ経験通算10年以上
  2. 各専門紙の代表者3名

1の記者クラブ経験通算10年以上はスポーツ紙の記者や各放送局のアナウンサー等が該当します。ただし、実況アナウンサーなど実務10年以上経過しても投票されないケースもあるため、実際には記者クラブ加入等含めて社内等で規定があるのかもしれません。
2の各専門紙は競馬ブック優馬などが該当します。日本競馬新聞協会、東京競馬新聞協会に所属している専門紙が条件になるため、競馬エイトなど加盟できない専門紙は含まれません。

 

投票数

1人あたり最大4頭まで投票可能です。
最大4頭なので3頭までの投票や1頭のみの投票もすることはできます。
また、投票しようと思えば0頭も可能です。
投票数が3頭以下の場合、余った票は「該当馬なし」として処理されます。

 

選定基準

規則による選定基準は次の3パターンあります。

  1. 競走成績が特に優秀であると認められる馬
  2. 競走成績が優秀であって、種牡馬又は繁殖牝馬としてその産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬
  3. その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬

ただし、実際に投票する記者がどのように理解・解釈しているのかは個々の判断になります。そのため、記者によって基準が異なる可能性が大きいです。

 

投票対象馬

投票実施前年の3月31日を起算日として過去20年以内にJRA登録抹消された馬が対象となります。
上の説明だと分かりにくいので2022年の場合を実例としてあげましょう。
起算日:投票実施前年の3月31日=2021年3月31日
過去20年以内:2001年4月1日
そのため、2022年の投票の場合、2001年4月1日~2021年3月31日にJRA登録を抹消された馬が対象となります。
具体的にはアーモンドアイ、フィエールマンなどが新規投票対象馬、逆にステイゴールドクロフネアグネスタキオンなどが2022年で投票最終回です。

 

選定の決め方

投票者数の3/4以上の票数を獲得した馬が顕彰馬に選定されます。
票数÷投票者数=得票率として表現されます。
また、投票に不参加の記者は投票者数に含まれません。

 

選定が無効になるケース

日本中央競馬会顕彰規則 第3条2項によると次のように書かれています。

2 記者投票の投票者数が、前項に規定する者の3分の2に満たない場合は、顕彰馬の選定は行わない。

つまり、記者投票者数が全体の2/3未満の場合は選定を行わないようです。
極論ボイコットを行えば意図的に選定を行わないことも可能なのですが、メリットも薄いため恐らく無いと思われます。

 

JRAから地方・海外へ移籍した場合の扱い

JRAを抹消し地方や海外へ移籍した馬も対象となります。
JRA抹消日から換算するため、地方競馬で現役のノンコノユメや海外で現役のケイアイノーテックも投票することは可能です。

 

無効票の扱い

顕彰規則細則 第5条3項、4項にはこう書かれています。

3 投票された馬名において同馬名を表記した場合は、そのうち1頭分のみ有効とし、その他を「該当馬なし」とみなす。また、4頭分ともに「該当馬なし」の場合は投票したものとみなし、当該年度の投票者数に数えるものとする。
4 規則第2条に規定する要件を満たしていない馬に対して投票があった場合は、「該当馬なし」と記載したものとみなす。

第5条3項の前半は同一馬名を書いたときは1頭だけ有効になり、他の同一馬名は該当馬なしへ置換する内容です。

4項は対象外の馬へ投票した場合、該当馬なしへ置換する内容です。以前、2012年度に当時対象外のニホンピロウイナーが投票・無効票として発表されたケースもありますが、問い合わせ確認したところ運用ミスなので現在は該当馬なしへ置き換えられます。

 

その他

顕彰馬選定投票で理由を記述する欄はありません。ちなみにJRA賞の場合だと、自由記述として記者がその年の総評等を記述する入力欄があります。

 

参考資料

投票に際し、記者には参考資料が配布されます。

顕彰馬選定参考資料

毎年説明内容は同じ構成ですが、2020年から種牡馬実績の資料が追加されました。
同じ頃からキングカメハメハの得票率が急上昇したのはこの影響があるのかもしれません。

選定資料内の種牡馬ランキング

投票方式

現在、投票するための方式として電子投票(インターネット投票)で行われています。
投票に際し手順書が配布されます。2017年までは投票用紙に馬名を記入しFAX送信する方式でした。

 

集計・発表

電子投票されたデータは集計され発表されます(下記PDFは2021年の集計結果)

https://www.jra.go.jp/news/202108/pdf/081102.pdf

また、記者毎の投票内訳はHPに公開されませんがデータとしては作成されます。

記者投票の内訳

おわりに

以上、ザックリとですがJRA顕彰馬選定投票制度のルールと仕組みになります。少しでも内容を理解して頂けたら幸いです。

ただし、この制度が全て正しいとは私も思っていません。正直現行ルールはかなり厳しいと感じるところもあるため得票率75%の基準を下げる等の対策や、抹消後20年を超えた馬への救済措置も含めてJRAには改善して欲しいと思いました。

 

参考サイト・資料

更新履歴

(2022/06/07) 選定方法のその他の内容を追加・変更しました。また、参考サイト・資料を追加しました。