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ダートグレード競走と国際格付けの取得

先日、地方競馬全国協会(NAR)や日本中央競馬界(JRA)などから発表された「全日本的なダート競走の体系整備」は6月の「3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備」に続き、日本競馬界のダート競走にとって大きな改革になりますね。

www.keiba.go.jp

その中の1つ「国際化に向けた取組」では2028年から段階的に「Jpn」表記の使用を取り止め、全てのダートグレード競走を国際競走とすることを目指す内容が発表されました。簡単に言えばJpn格付け→G格付けへ移行する訳ですが、今回はどのような手順やハードルがあるのか簡単に説明していきます。

 

国際格付けを取得するために

今回発表された「全日本的なダート競走の体系整備について」の「3.その他 - (2) 国際化に向けた取組」ではこのように記載されています。

地方競馬ダートグレード競走は、国内向けの格付表記として東京大賞典を除く全ての競走で「Jpn」を使用しており、国際的に認められた共通の格付けで管理されるべきパートI国の競走として、足並みが揃っていない状況です。

また、国際競走となっていない競走については、ブラックタイプ競走(セリ名簿に競走の格と馬名が太字で記載できる競走)の中でも評価の低いLR(制限付きリステッド競走)に分類されております。

このような状況に鑑み、日本のダート競馬の国際的な評価を高めるべく、地方競馬では2028年から段階的に「Jpn」表記の使用を取り止め、全てのダートグレード競走を国際競走とすることを目指します。より高い国際格付けの取得に向けた賞金額の設定やレースレーティングの達成、海外出走馬の受け入れ体制の整備など、国際化へ向けた具体的な取組を地方競馬一丸となって進めてまいります。

国際格付けの取得に向けて大まかには次の3点が掲げられています。

  1. 賞金額の設定
  2. レースレーティングの達成
  3. 海外出走馬の受け入れ体制の整備

この他にも運用上の課題等はあるかもしれませんが、今回はこの3点を解説していきます。また、日本における国際格付けのルールは「日本グレード格付管理委員会」による「日本グレード格付要綱」になります。内容については以前解説した次の記事をご覧ください。なお、基本的に同じ数字のJpn格付け→G格付けへ移行することを前提に記載してあります。

gachach.hatenablog.com

 

賞金額の設定

国際格付けを得るためにまずは本賞金の基準をクリアする必要があります。格付けと年齢別に1着本賞金と総額本賞金でそれぞれ基準以上になればOKです。

国際格付けと本賞金の基準

日本グレード格付管理委員会が定める本賞金の基準は次のとおりになります。

 

1着本賞金

古馬 3歳 2歳
G1 5,000 4,000 3,200
G2 4,000 3,000 2,400
G3 3,000 2,000 1,600
L 1,600 1,250 1,000

 

総額本賞金

古馬 3歳 2歳
G1 8,500 6,800 5,440
G2 6,800 5,100 4,080
G3 5,100 3,400 2,720
L 2,720 2,125 1,700

金額単位はいずれも万円です。

 

レース別本賞金金額

レース毎の総額本賞金と不足額は次のとおりになります。

競走名 実施
時期
実施場 競走条件 2024年
総本賞金
※想定
G格付け
総本賞金
必要額
不足額
ブルーバードC 1月中旬 JpnⅢ 船橋 3歳 3,060 3,400 -340
クイーン賞 2月上旬 JpnⅢ 船橋 4歳以上牝馬 4,250 5,100 -850
佐賀記念 2月上旬 JpnⅢ 佐賀 4歳以上 3,910 5,100 -1,190
雲取賞 2月中旬 JpnⅢ 大井 3歳 3,060 3,400 -340
かきつばた記念 3月上旬 JpnⅢ 名古屋 4歳以上 4,250 5,100 -850
ダイオライト記念 3月上旬 JpnⅡ 船橋 4歳以上 5,440 6,800 -1,360
京浜盃 3月中旬 JpnⅡ 大井 3歳 4,760 5,100 -340
黒船賞 3月中旬 JpnⅢ 高知 4歳以上 4,420 5,100 -680
兵庫女王盃 4月上旬 JpnⅢ 園田 4歳以上牝馬 3,740 5,100 -1,360
川崎記念 4月上旬 JpnⅠ 川崎 4歳以上 10,200 8,500 0
東京スプリント 4月上旬 JpnⅢ 大井 4歳以上 4,590 5,100 -510
羽田盃 4月下旬 JpnⅠ 大井 3歳牡・牝 8,500 6,800 0
エンプレス杯 5月上旬 JpnⅡ 川崎 4歳以上牝馬 5,950 6,800 -850
兵庫CS 5月上旬 JpnⅡ 園田 3歳 5,950 5,100 0
かしわ記念 5月上旬 JpnⅠ 船橋 4歳以上 13,600 8,500 0
名古屋GP 5月上旬 JpnⅡ 名古屋 4歳以上 5,950 6,800 -850
さきたま杯 6月中旬 JpnⅠ 浦和 4歳以上 6,970 8,500 -1,530
東京ダービー 6月上旬 JpnⅠ 大井 3歳牡・牝 17,000 6,800 0
関東オークス 6月中旬 JpnⅡ 川崎 3歳牝馬 5,950 5,100 0
帝王賞 6月下旬 JpnⅠ 大井 4歳以上 13,600 8,500 0
スパーキングレディーC 7月上旬 JpnⅢ 川崎 3歳以上牝馬 4,250 5,100 -850
マーキュリーC 7月中旬 JpnⅢ 盛岡 3歳以上 4,760 5,100 -340
北海道スプリントC 8月中旬 JpnⅢ 門別 3歳 3,740 3,400 0
クラスターC 8月中旬 JpnⅢ 盛岡 3歳以上 4,760 5,100 -340
ブリーダーズゴールドC 9月上旬 JpnⅢ 門別 3歳以上牝馬 5,270 5,100 0
サマーチャンピオン 9月上旬 JpnⅢ 佐賀 3歳以上 5,100 5,100 0
不来方賞 9月上旬 JpnⅡ 盛岡 3歳 4,760 5,100 -340
オーバルスプリント 9月中旬 JpnⅢ 浦和 3歳以上 4,250 5,100 -850
マリーンC 9月下旬 JpnⅢ 船橋 3歳牝馬 4,250 3,400 0
日本テレビ盃 9月下旬 JpnⅡ 船橋 3歳以上 5,950 6,800 -850
白山大賞典 9月下旬 JpnⅢ 金沢 3歳以上 3,570 5,100 -1,530
ジャパンダートクラシック 10月上旬 JpnⅠ 大井 3歳牡・牝 11,900 6,800 0
東京盃 10月上旬 JpnⅡ 大井 3歳以上 5,950 6,800 -850
レディスプレリュード 10月上旬 JpnⅡ 大井 3歳以上牝馬 5,270 6,800 -1,530
マイルCS南部杯 10月中旬 JpnⅠ 盛岡 3歳以上 10,200 8,500 0
エーデルワイス賞 11月上旬 JpnⅢ 門別 2歳牝馬 3,400 2,720 0
JBC2歳優駿 11月上旬 JpnⅢ 門別 2歳 5,950 2,720 0
JBCレディス
クラシック
11月上旬 JpnⅠ 持回り 3歳以上牝馬 10,200 8,500 0
JBCスプリント 11月上旬 JpnⅠ 持回り 3歳以上 13,600 8,500 0
JBCクラシック 11月上旬 JpnⅠ 持回り 3歳以上 17,000 8,500 0
浦和記念 11月下旬 JpnⅡ 浦和 3歳以上 6,800 6,800 0
兵庫ジュニアGP 11月下旬 JpnⅡ 園田 2歳 5,100 4,080 0
全日本2歳優駿 12月中旬 JpnⅠ 川崎 2歳 7,140 5,440 0
名古屋大賞典 12月下旬 JpnⅢ 名古屋 3歳以上 3,740 5,100 -1,360
兵庫ゴールドT 12月下旬 JpnⅢ 園田 3歳以上 5,100 5,100 0
東京大賞典 12月下旬 GⅠ 大井 3歳以上 17,000 8,500 0

※金額単位はいずれも万円です。
※2024年総本賞金は現時点で発表されていないため2022年の金額になります。
 また、斜体は新設ダートグレードのため、Jpn格付けの最低基準を記載してあります。
 そのため、今後の発表で変更になる可能性が高いと思われます。

傾向としては次のように確認できます。

  • G1昇格を目指すレースは賞金基準はクリア
  • G2・G3昇格を目指す世代限定戦も賞金基準をクリア
  • G2・G3昇格を目指す古馬戦は賞金基準がNG

 

また、主催者別の不足額は次のようになります。

No ブロック 実施場 2024年総本賞金 国際格付け取得に
必要な総本賞金
不足額
1 北日本 門別 18,360 18,360 0
2 北日本 盛岡 24,480 25,500 -1,020
3 東日本 浦和 18,020 20,400 -2,380
4 東日本 船橋 36,550 39,950 -3,400
5 東日本 大井 91,630 95,200 -3,570
6 東日本 川崎 33,490 35,190 -1,700
7 中日本 名古屋 13,940 17,000 -3,060
8 中日本 金沢 3,570 5,100 -1,530
9 西日本 園田 19,890 21,250 -1,360
10 西日本 高知 4,420 5,100 -680
11 西日本 佐賀 9,010 10,200 -1,190
12 不定 持回り 40,800 40,800 0

表は、2024年以降の総本賞金、2024年以降の総額本賞金から国際格付けを取得するために必要な総本賞金と不足額を説明しました。

門別とJBCのみ2024年以降の総額本賞金で足りますが、他の競馬場は680~3570万円を更に上乗せする必要があります。ただし、金額は2022年発表のもののため、2024年の時点で上乗せ金額は減る可能性はあります。実際にどのぐらいの金額が不足しているのか正確に判断できるのは来年以降になるでしょう。

 

レースレーティングの達成

次にレーティング条件を達成する必要があります。国際格付けを申請するタイミングで直近の年間レースレーティングとパターンレースレーティング*1の2項目とも達成すれば格付けを得られます。ただし、新規グレードの場合、原則G3から格付けを行うルールがあるため、G1やG2からの格付けが年間どのぐらい許容されるのかは不透明な部分と考えられます。

 

国際格付けとレーティングの基準

日本グレード格付管理委員会が定める昇格のためのレーティング基準とクリア条件は次のとおりになります。また昇格条件によってはアジア地域の格付け管理を担当するアジアパターン委員会(APC)への上申が必要になるケースもあります。

 

昇格レーティング基準値

格付け GⅠ GⅡ GⅢ リステッド
3歳・3(4)歳以上 115 110 105 100
〃(牝馬限定) 111 106 101 96
2歳 110 105 100 95
〃(牝馬限定) 106 101 96 91

 

クリア条件

  • 直近の年間レースレーティングが昇格基準値以上
  • パターンレースレーティングが昇格基準値以上
  • G1、G2から格付けを始める場合、APCの承認が必要
  • G1へ昇格する場合、APCの承認が必要

 

レース別レーティング

レース毎の年間レースレーティングと不足値は次のとおりになります。なお、ダートグレード競走へ新規追加となる羽田盃東京ダービーなどの競走や、施行条件が世代限定戦へ変更される北海道スプリントCマリーンCは除外しました。

年間レースレーティング
レース名 年間レースレーティング 基準値 最高値
との差
判定
2019 2020 2021 2022
GⅠ 東京大賞典 113.75 110.75 113.25 - 115 -1.25 -
JpnⅠ 川崎記念 111.75 110.00 111.50 110.00 115 -3.25 ×
JpnⅠ かしわ記念 113.50 113.50 112.00 111.00 115 -1.50 ×
JpnⅠ さきたま杯 109.00 105.75 109.25 107.75 115 -5.75 ×
JpnⅠ 帝王賞 114.25 116.50 114.50 116.00 115 1.50
JpnⅠ マイルCS南部杯 112.50 113.50 112.50 113.25 115 -1.50 ×
JpnⅠ JBCスプリント 106.75 112.00 108.25 113.75 115 -1.25 ×
JpnⅠ JBCクラシック 111.25 114.75 116.50 113.75 115 1.50
JpnⅠ ジャパンダートクラシック 110.25 105.00 108.25 111.25 115 -3.75 ×
JpnⅠ JBCレディスクラシック 104.50 103.75 103.25 111.75 111 0.75
JpnⅠ 全日本2歳優駿 105.75 101.50 104.75 - 110 -4.25 ×
JpnⅡ ダイオライト記念 112.25 105.25 109.00 107.00 110 2.25
JpnⅡ 名古屋GP 106.25 105.25 105.00 108.75 110 -1.25 ×
JpnⅡ 日本テレビ盃 103.75 106.75 107.75 111.00 110 1.00
JpnⅡ 東京盃 108.00 110.00 110.75 109.75 110 0.75
JpnⅡ 浦和記念 108.50 109.00 107.75 106.25 110 -1.00 ×
JpnⅡ 兵庫CS 101.00 97.75 103.00 109.25 110 -0.75 ×
JpnⅡ エンプレス杯 100.75 100.75 105.25 108.75 106 2.75
JpnⅡ レディスプレリュード 101.75 104.75 104.00 107.75 106 1.75
JpnⅡ 関東オークス 96.00 99.75 97.00 100.75 106 -5.25 ×
JpnⅡ 兵庫ジュニアGP 101.50 103.25 101.50 99.75 105 -1.75 ×
JpnⅢ 佐賀記念 103.00 102.00 100.50 95.50 105 -2.00 ×
JpnⅢ かきつばた記念 106.00 103.00 102.25 109.75 105 4.75
JpnⅢ 黒船賞 104.25 103.25 100.25 107.75 105 2.75
JpnⅢ 東京スプリント 106.50 109.25 106.75 108.25 105 4.25
JpnⅢ マーキュリーC 105.75 105.00 101.50 104.50 105 0.75
JpnⅢ クラスターC 104.75 107.25 104.50 111.00 105 6.00
JpnⅢ サマーチャンピオン 93.25 106.75 107.50 104.75 105 2.50
JpnⅢ オーバルスプリント 107.25 104.75 103.50 104.25 105 2.25
JpnⅢ 白山大賞典 106.75 107.25 110.50 106.25 105 5.50
JpnⅢ 名古屋大賞典 105.25 103.25 104.75 106.00 105 1.00
JpnⅢ 兵庫ゴールドT 99.75 103.25 105.75 - 105 0.75
JpnⅢ クイーン賞 101.50 91.25 96.75 108.50 101 7.50
JpnⅢ 兵庫女王盃 94.25 103.75 105.88 109.25 101 8.25
JpnⅢ スパーキングレディーC 98.00 102.00 100.75 107.50 101 6.50
JpnⅢ ブリーダーズゴールドC 102.50 99.50 103.75 104.50 101 3.50
JpnⅢ JBC2歳優駿 100.75 102.25 100.50 99.25 100 2.25
JpnⅢ エーデルワイス賞 95.75 95.50 98.50 98.25 96 2.50

※レース名の赤字牝馬限定戦斜体は2歳限定戦となります。

※2022年のレーティングは12月中旬時点の暫定値となります。

※判定は過去4年で年間レースレーティング以上となった目安です。
 ◎:4回、○:3回、△:1~2回、×:0回

 

パターンレースレーティング
レース名 パターンレースレーティング 基準値 最高値
との差
判定
2019 2020 2021 2022
GⅠ 東京大賞典 115.33 113.33 112.58   115 0.33 -
JpnⅠ 川崎記念 112.25 111.42 111.08 110.50 115 -2.75 ×
JpnⅠ かしわ記念 114.42 114.08 113.00 112.17 115 -0.58 ×
JpnⅠ さきたま杯 108.00 107.17 108.00 107.58 115 -7.00 ×
JpnⅠ 帝王賞 114.25 114.92 115.08 115.67 115 0.67
JpnⅠ マイルCS南部杯 113.17 113.50 112.83 113.08 115 -1.50 ×
JpnⅠ JBCスプリント 110.17 109.92 109.00 111.33 115 -3.67 ×
JpnⅠ JBCクラシック 113.67 113.67 114.17 115.00 115 0.00
JpnⅠ ジャパンダートクラシック 110.33 109.25 107.83 108.17 115 -4.67 ×
JpnⅠ JBCレディスクラシック 105.17 104.67 103.83 106.25 111 -4.75 ×
JpnⅠ 全日本2歳優駿 105.92 104.33 104.00 - 110 -4.08 ×
JpnⅡ ダイオライト記念 107.75 108.83 108.83 107.08 110 -1.17 ×
JpnⅡ 名古屋GP 106.58 106.67 105.50 106.33 110 -3.33 ×
JpnⅡ 日本テレビ盃 110.83 108.00 106.08 108.50 110 0.83
JpnⅡ 東京盃 108.67 109.33 109.58 110.17 110 0.17
JpnⅡ 浦和記念 108.67 109.33 108.42 107.67 110 -0.67 ×
JpnⅡ 兵庫CS 102.25 99.00 100.58 103.33 110 -6.67 ×
JpnⅡ エンプレス杯 101.33 101.58 102.25 104.92 106 -1.08 ×
JpnⅡ レディスプレリュード 103.92 103.33 103.50 105.50 106 -0.50 ×
JpnⅡ 関東オークス 96.08 96.83 97.58 99.17 106 -6.83 ×
JpnⅡ 兵庫ジュニアGP 100.50 101.83 102.08 101.50 105 -2.92 ×
JpnⅢ 佐賀記念 103.25 102.67 101.83 99.33 105 -1.75 ×
JpnⅢ かきつばた記念 104.50 104.75 103.75 105.00 105 0.00
JpnⅢ 黒船賞 105.08 103.92 102.58 103.75 105 0.08
JpnⅢ 東京スプリント 105.75 107.58 107.50 108.08 105 3.08
JpnⅢ マーキュリーC 105.75 104.67 104.08 103.67 105 0.75
JpnⅢ クラスターC 103.83 104.67 105.50 107.58 105 2.58
JpnⅢ サマーチャンピオン 100.17 101.33 102.50 106.33 105 1.33
JpnⅢ オーバルスプリント 104.42 104.92 105.17 104.17 105 0.17
JpnⅢ 白山大賞典 106.67 106.58 108.17 108.00 105 3.17
JpnⅢ 名古屋大賞典 106.67 105.08 104.42 104.67 105 1.67
JpnⅢ 兵庫ゴールドT 101.00 100.67 102.92 - 105 -2.08 ×
JpnⅢ クイーン賞 100.00 96.58 96.50 98.83 101 -1.00 ×
JpnⅢ 兵庫女王盃 98.92 99.25 101.29 106.29 101 5.29
JpnⅢ スパーキングレディーC 101.42 100.75 100.25 103.42 101 2.42
JpnⅢ ブリーダーズゴールドC 99.83 101.00 101.92 102.58 101 1.58
JpnⅢ JBC2歳優駿 99.25 99.67 101.17 100.67 100 1.17
JpnⅢ エーデルワイス賞 95.50 96.33 96.58 97.42 96 1.42

 

レーティング傾向

年間レースレーティングとパターンレースレーティングの傾向を見ると次のことが分かります。

  • G3昇格を目指す競走はタイミングが合えばクリア可能
  • G2・G1を目指す競走は全般的にレーティング不足
  • 牝馬限定G1や世代限定G2以上はかなり厳しい

以下、個別のレースについてとなります。

さきたま杯は現状かなり厳しいラインですが、Jpn2時代のレーティング値であるため古馬短距離路線を整備すればJBCスプリント並までは上がるでしょう。ただし、それでも不足しているのでその他にも底上げは必要になるかと思われます。今年のダンシングプリンスのように海外で活躍する馬がいればレーティングの上げやすい環境も作りやすいでしょう。

川崎記念はサウジ組やドバイ組の出走が見込めないため、帝王賞や秋にどれだけつなげられるかがG1昇格への課題になると思います。

ジャパンダートクラシックを始めとしたダート三冠路線は前哨戦と本番の整備でどこまでG2クラスまでは上がるでしょう。問題はそこから先で、3歳終盤で古馬と対戦したときにどれだけ活躍馬を送り出せるかにかかっています。

JBCレディスクラシック牝馬路線整備で上がる余地はありますが、レースが増えるわけでは無いので大幅増は難しいかもしれません。現状だと、G2レベルなので今年のショウナンナデシコのように牡馬と対等で戦える馬が上手く出走することを願います。

全日本2歳優駿は現状だとG3クラスなため、ネクストスターの効果が成功のカギを握っているでしょう。個人的にはそれでも足りないと思うため2歳限定のダートグレード競走を設置した方が早いと思いますが…。

兵庫CSもG2格付けを得るにはレーティングが全然足りません。ただし、短距離化してレースの質自体が変わるため、ネクストスターから路線をつなげられるか、秋への活躍馬を多く出せるかにかかっています。

一番問題なのは関東オークスでしょうか。G2格付けを目指すにはレーティングが絶望的に足りず、加えて他に3歳牝馬限定のダートグレード競走マリーンCしかありません。レーティングが上がる余地が殆ど無いため、今後3歳ダート牝馬三冠などの創設が期待されます。

その他、レーティング的に盤石なのは東京スプリント白山大賞典でしょうか。いずれもG3で敷居が低い理由もありますが、白山大賞典が入るのは少し意外に感じました。

 

原則G3からの格付け

現在、G格付けを行う場合は原則G3から行うことが基本となります。IRPAC、APC、日本グレード格付管理委員会がそれぞれルールを記載していますがどのようなものか見ていきましょう。

日本グレード格付け管理委員会の場合

日本の平地競走でG格付け/Jpn格付けを担当する日本グレード格付管理委員会では次のように記載されています。

6.格付けの審査等
(3)その他
②新たなグレード格付けは、特別な場合を除いてGⅢ競走とする。GⅠ競走またはGⅡ競走とする場合にはAPCにおける承認を必要とする。

日本グレード格付管理要綱より

この内容だとAPCの承認を受けることが出来ればG1やG2格付けが可能のように読めます。

 

アジアパターン委員会(APC)の場合

アジア・オセアニア南アフリカ地域を主とするアジア競馬連盟に属する国や地域のG格付けを担当するAPCでは次のように記載されています。

Asian Pattern Committee Ground Rules
3. Rules Governing Asian Pattern Race Changes
ii. Upgrading of Existing Pattern Races and the Creation of New Pattern Races
d. A race satisfying the requirements for admission to the Pattern must be introduced as a Group 3 race other than in exceptional circumstances. If it is proposed that a race be introduced as a Group 2 or Group 1 race, approval must be sought from the Committee.

Revised APC Ground Rules (February 26, 2019).pdf より

大まかには、新規格付けをする場合は例外を除いてG3から格付けしなければなりません。G2またはG1として格付けする場合はAPCの承認が必要となります。

 

国際格付番組企画諮問委員会(IRPAC)の場合

最後に全世界のG格付けや番組企画を担当するIRPACではブルーブックにパート1国のガイドラインとして次のように記載されています。

・New Group/Grade 2 or 1 may only be created without prior running under the following exceptional circumstances--

This creation must be induced by the implementation of a project or event of continental or intercontinental importance. Such project or event should be designed to have a major impact on the racing and/or breeding activity of all the countries of the region concerned and eventually for such activity worldwide.

The project or event must be unanimously supported by the members of each regional committee concerned, in charge of controlling quality in the existing Group/Graded system.

The detailed project or event must have been notified by the regional committee to IRPAC, with justification for exceptional circumstances no later than 30 days prior to the next scheduled IRPAC meeting.

Any race granted Group/Graded status under exceptional circumstances must be reviewed every year by the relevant regional committee in charge of controlling quality in the existing Group/
Graded system, and automatically downgraded after three runnings if the quality of the runners does not comply with the stated criteria.

INTERNATIONAL CATALOGUING STANDARDS and INTERNATIONAL STATISTICS 2022 より

前2つと比較して長いですが出来るだけ短くまとめていきましょう。

G1またはG2から格付けする場合は以下の例外的な状況下でのみ新規格付けできます。

  • レースが大陸もしくは世界的なプロジェクトで実施、大きな影響を与える場合に新設可能。
  • プロジェクトは地域パターン委員会のメンバーで全会一致でサポートしなければならない。
  • 詳細なプロジェクトは地域パターン委員会からIRPACに通知が必要。例外的な状況だとIRPAC次回会議の30日前までに正答な理由も必要。
  • 例外的な状況でG格付けされたレースは、地域パターン委員会で毎年見直しが必要。基準を満たさない場合は3回後に自動降格。

 

各機関のルール・ガイドラインを読んで

以上が日本グレード格付管理委員会、APC、IRPACのそれぞれのルール・ガイドラインになります。

日本グレード格付管理委員会とAPCのルールは理由付けさえ出来ればまだ何とかなる範囲に感じます。が、IRPACのガイドラインはレースの規模が大きくなければ許されない印象すら受けました。

近年APC管轄下で例外的にG2やG1格付けが認められたケースは知る限りでは次の2例のみだと思われます。

  1. 2016/2017年シーズンから香港がパート1国へ昇格した際の格付け
  2. 2022年にサウジアラビアがパート2国へ昇格、同時にサウジカップが新規G1昇格

これらと同等レベルなのかは疑問が残りますが、認められた場合はいきなりG1やG2からの格付けが可能です。もし認められない場合はG3からの格付けになります。もしかしたらそれらを見越して2028年から2033年まで段階的に実施していく気がしないでもないですね。

 

海外出走馬の受け入れ体制の整備

海外出走馬を受け入れるためには検疫施設等の条件をクリアする必要もあります。

 

JRAの場合(参考)

JRAの国際競走へ出走する外国馬の場合、大まかには下記の流れになります。

  1. 空港から指定施設で輸入検疫を行う(競馬学校三木ホースランドパーク東京競馬場
  2. 出走する競馬場の国際厩舎へ入厩する
  3. レースへ出走
  4. 出走した競馬場から出国処理を行い、空港から出国する

 

輸入検疫

関東の場合、千葉県白井市にあるJRA競馬学校になります。また、東京競馬場で施行されるレースへ出走する外国馬は東京競馬場で行うことも可能です。

関西の場合、兵庫県にある三木ホースランドパークになります。

 

競馬場の国際厩舎

外国馬が競馬場で滞在する厩舎になります。2022年現在、東京競馬場のみ輸入検疫を兼ねて行えますが、他の競馬場は輸入検疫を行えません。

 

実例(2015年高松宮記念へ出走したエアロヴェロシティの場合)

では実際に出走した馬の事例を見ていきましょう。2015年高松宮記念へ出走した香港のエアロヴェロシティの場合、ニュース発表が詳細で掲載されているため、参考になりやすいでしょう。移動の時系列は次のとおりとなります。

  • 2015/03/17 香港を出発
  • 2015/03/17 成田空港に到着
  • 2015/03/17 競馬学校国際厩舎へ入厩(輸入検疫のため)
  • 2015/03/23 競馬学校国際厩舎を離れ、中京競馬場へ出発(出発時刻 11:11)
  • 2015/03/23 中京競馬場へ到着
  • 2015/03/29 高松宮記念へ出走、優勝
  • 2015/03/30 中京競馬場国際厩舎を退厩(出発時刻10:51)
  • 2015/03/30 成田空港から香港へ出国

 

地方競馬の場合

地方競馬の各主催者で実施される国際競走へ出走する外国馬の場合も手順はJRAと同じです。ただし、使用可能な施設が異なります。

輸入検疫

地方競馬の場合、栃木県那須塩原市にある地方競馬教養センターの国際厩舎で輸入検疫を行います。2022年現在、東京競馬場のような輸入検疫を兼ねた国際厩舎は大井競馬場を始め存在しません。

 

競馬場の国際厩舎

2022年現在、大井競馬場川崎競馬場に国際厩舎が設定されています。盛岡競馬場では着地検疫は可能ですが、現時点でどこまで運用が可能なのかは不明です。その他ダートグレード競走が実施される競馬場(門別・浦和・船橋・名古屋・金沢・園田・高知・佐賀)では国際厩舎は設定されていません。また、笠松は近年ダートグレード競走を実施していませんが、会見の場で開催する意向はあるとのことでした。

各競馬場の国際厩舎対応状況

No 実施場 国際厩舎対応 備考
1 門別 ×  
2 盛岡 着地検疫のみ
3 浦和 ×  
4 船橋 ×  
5 大井 外国馬来日実績あり
6 川崎 外国馬来日実績なし
7 名古屋 ×  
8 金沢 ×  
9 園田 ×  
10 高知 ×  
11 佐賀 ×  

 

各競馬場の厩舎関連改修について

第三期競馬活性化計画に基づく事業実施状況及び事業収支改善進捗状況評価報告書(令和2年度)によると各厩舎関連施設の改修予定は以下の表のとおりです。

地方競馬主催者における厩舎施設等の整備状況と必要額

緑色のマーキング部分が関連のありそうな項目と考えています。ただし、報告書の発表時点から状況が大きく変わっているため、この内容も変化があるかもしれません。いずれにせよ次回の報告書でどのように変わっているか注目です。

 

その他

今回発表にはありませんでしたが、国際グレード格付けを取得するに辺り気になることが1点あります。

 

JRA所属馬、外国馬の出走枠

それは、JRA所属馬と外国馬の出走枠です。ブルーブックにはIRPACが定めるパート1国の条件が記載されており、次の一文が書かれています。この一文は2016年から追加されました。

No Group/Graded races should have any geographically-based conditions of entry in regard to the place of the horse’s birth, training or ownership.

つまり、「重賞競走(グレード競走)は馬の生産地、調教地、馬主に関して地理的条件に基づいた登録条件を設けるべきではありません。」といった内容になります。

 

東京大賞典の場合

既にG1競走として施行されている東京大賞典では2015年までは他のダートグレード競走と同様にJRA所属馬と地方所属馬で出走枠が分かれて記載されていました。

www.tokyocitykeiba.com

 

しかし、2016年から出走馬選定委員会を置いて選出する方式となり、JRA所属馬と地方所属馬が混在する表記に変わりました。www.tokyocitykeiba.com

 

ただし、内々ではJRA所属馬の出走枠の存在は残っています。*2

race.sanspo.com

JRAは6日、来年の地方競馬におけるダート交流重賞で、中央馬の出走枠が拡大されることを発表した。
(中略)
今年の実績を考慮して、下記の競走で各1頭拡大される。
マイルチャンピオンシップ南部杯帝王賞ジャパンダートダービーは6頭から7頭に。かしわ記念川崎記念は5頭から6頭に。東京大賞典は外国馬の出走がなければ6頭から7頭にそれぞれ増え、JBC各競走はフルゲートに応じて変動(12頭以下=5頭、13~14頭=6頭、15頭以上=7頭)する。

 

そのため推測になりますが、パート1国の条件の追加によって選出方法が委員会方式に変わり、JRA所属馬の出走枠が増え、出走順が表上わからなくなった可能性があります。

 

全日本2歳優駿の場合

同じ国際競走の全日本2歳優駿は2022年現在もJRA所属馬と地方所属馬でそれぞれ枠を設け表記しています。ただ全日本2歳優駿は国際的にはリステッド扱いのため、影響が無いのでしょう。

 

今後国際格付けを取得する場合の影響

2024年から始まるダート三冠路線のうち東京ダービーまではJRA所属馬の出走枠が極端に少ない状況です。

ツイートにも書いてあるとおり、現在は地方側への配慮がある点、完成系ではなく整備がある点とのニュアンスがあります。個人的には国際化する時点では外国馬枠を含むJRA所属馬の出走枠は増えるとは思います。ただし、それはどの程度まで許容されるのかは蓋を開けてみてのことでしょう。選考委員会形式に変更して表上は分からず実態は変わらない可能性もありますが。

 

おわりに

賞金面、レーティング、検疫面でJpn表記を止め、G格付けを得るには数々のハードルが待ち構えています。現在でもすんなり移行可能な競走は東京スプリントぐらいでしょう。路線改革が本格的に始まる再来年の2024年、そしておよそ5年後の2028年にまずはどのような形になるか注目していきたいと思います。

 

参考文献

 

参考資料

(2023/11/18) 一部URLが誤っていたため修正、リンク切れURLにアーカイブを追加しました。