昨年、競馬の平地競走におけるG格付けやJpn格付けのルールについて記事を書いてみました。
今回は2023年も残り4ヶ月を切りましたが、今年度版を前回からの変更点を中心に紹介します。
※今回紹介する記事は2023年1月時点のルールになります。
日本グレード格付管理要綱の変更点
日本におけるG格付けのルールになります。今回紹介する内容は前回記事2021年1月1日施行版との比較になります。
5.格付基準
(1)本賞金額
本賞金額については、競走種別・グレード別に原則として以下の金額を満たすものとする。
①2歳
G Ⅰ・・・1着3,200万円以上 総額5,440万円以上
G Ⅱ・・・1着2,400万円以上 総額4,080万円以上
G Ⅲ・・・1着2,000万円以上 総額3,400万円以上
リステッド・・・1着1,600万円以上 総額2,720万円以上
②3歳
G Ⅰ・・・1着4,000万円以上 総額6,800万円以上
G Ⅱ・・・1着3,000万円以上 総額5,100万円以上
G Ⅲ・・・1着2,400万円以上 総額4,080万円以上
リステッド・・・1着1,800万円以上 総額3,060万円以上
③3(4)歳以上
G Ⅰ・・・1着5,000万円以上 総額8,500万円以上
G Ⅱ・・・1着4,000万円以上 総額6,800万円以上
G Ⅲ・・・1着3,000万円以上 総額5,100万円以上
リステッド・・・1着2,400万円以上 総額4,080万円以上
一部条件の金額が変更されましたが、後述する附則と絡むため後ほど説明します。
6.格付けの審査等
(3)その他
① APCにおいてGⅠ競走の降格が審査される際、年間レースレーティングの算出において、当該レース出走馬のうちレーティングの高い4頭のレーティングを用いて算出した数値が考慮される場合がある。
② 新たなグレード格付けは、特別な場合を除いてGⅢ競走とする。GⅠ競走またはGⅡ競走とする場合にはAPCにおける承認を必要とする。
③ 下表左欄に定める項目の変更を行う場合、各主催者は委員会に変更申請を行わなければならない。ただし、下表(1)から(7)・(9)の右欄に該当しない変更、(8)の変更ならびに工事等により一時的に実施場および競走距離を変更した競走が変更前と同様の実施場および競走距離となる場合は、報告とすることも可とする。
なお、下表左欄の変更項目のうち、右欄に該当する変更が生じる場合は、委員会の過半数の承認を必要とする。
(1)格付け *1 すべての変更 (2)競走種別 すべての変更 (3)性別 すべての変更 (4)実施時期 *2 当該節から前々節または次々節を超える変更 (5)競走距離 1,600m以上の競走:200m以上の距離変更 1,600m未満の競走:100m以上の距離変更 (6)使用馬場 ・芝、ダートの変更
・左回り、右回りの変更
・コース形態の大幅な変更(7)実施場 工事等による一時的な変更以外のもの (8)競走名 (9)負担重量 ・種類(馬齢・定量・別定・ハンデ)の変更
・競走成績による増減重量の変更*1 昇格の承認については、6-(1)ー③により、委員会の全会一致が必要
*2 実施時期は以下の節による第1節
・1月1日が水・木・金曜日および閏年の火曜日の場合、
1月1日から第2金曜日まで・1月1日が土・日・月・火(除く閏年)の場合、
1月1日から第1金曜日まで第2節から第51節
第1節直後の土曜日から直後の金曜日までを第2節とし、以降同様に第51節まで順次区分とする第52節
第51節直後の土曜日から12月31日まで
④ 競走名については原則として恒久的な競走名を使用しなければならない。ただし、不変箇所を除く名称における変更もしくは追加はこれを認める。
⑤ 上記(1)・(2)にかかわらず、IRPACまたはAPCの合意事項により、競走の昇格および降格を判断する場合がある。
③の内容が詳細化されました。
7.格付けの申請
各主催者は、日程・競走内容等について各主催者間での調整・合意を経た上で、競馬会は格付けの対象となる競走を行う予定の年度の前年9月末日までに、各地方競馬主催者は前年10月末日までに、委員会に申請するものとする。なお、GⅠ競走への昇格および実施場もしくは馬場の変更を伴う昇格申請については8月第3金曜日までに完了するものとし、委員会で承認された競走はAPCに上申する。
委員会は申請された格付案を審査し、審査後は速やかに重賞競走の格付けを各主催者へ通知するものとする。
主催者間で調整・合意を経る文章が追加、中央競馬と地方競馬主催者の申請期限が分離しました。
附則
附則
この要綱は、2022(令和4)年1月1日から施行する。附則
この要綱は、2022(令和4)年5月20日から施行する。附則
この要綱は、2023(令和5)年1月1日から施行する。ただし、改正後の日本グレード格付管理要綱第5項第1号の規定は2024(令和6)年4月1日から適用する。
まとめ
2021年1月からの変更点をまとめると次のようになります。
- 2024年4月から一部格付けの賞金基準が上昇 5-(1)と附則より
- 変更申請や報告が必要な内容が具体化 6-(3)-③より
- 格付け申請前に主催者間で合意する文面が追加 7より
- 地方競馬の格付け申請期限が10月末まで延長 7より
賞金については2024年4月から世代限定戦G3、全てのリステッドで必要な賞金基準が上がります。1着賞金の変更前、変更後は次のとおりです。
カテゴリ | 格付け | 変更前1着賞金 | 変更後1着賞金 | 差額 |
---|---|---|---|---|
2歳 | GⅢ | 1,600万円以上 | 2,000万円以上 | +400万円 |
2歳 | リステッド | 1,000万円以上 | 1,600万円以上 | +600万円 |
3歳 | GⅢ | 2,000万円以上 | 2,400万円以上 | +400万円 |
3歳 | リステッド | 1,250万円以上 | 1,800万円以上 | +550万円 |
3(4)歳以上 | リステッド | 1,600万円以上 | 2,400万円以上 | +800万円 |
残りの3点はダート競走Jpn格付要綱と類似文があるため、同じタイミングで同期を合わせたと考えられます。
ダート競走Jpn格付要綱の変更点
ダート競走の格付けで使用されるJpn格付けに関するルールです。こちらも前回記事2022年5月20日施行版との比較を行います。
5.格付基準
(1)本賞金額
本賞金額については、競走種別・グレード別に原則として以下の金額を満たすものとする。
①2歳
JpnⅠ・・・1着3,200万円以上 総額5,440万円以上
JpnⅡ・・・1着2,400万円以上 総額4,080万円以上
JpnⅢ・・・1着2,000万円以上 総額3,400万円以上
②3歳
JpnⅠ・・・1着4,000万円以上 総額6,800万円以上
JpnⅡ・・・1着3,000万円以上 総額5,100万円以上
JpnⅢ・・・1着2,400万円以上 総額4,080万円以上
③3(4)歳以上
JpnⅠ・・・1着5,000万円以上 総額8,500万円以上
JpnⅡ・・・1着4,000万円以上 総額6,800万円以上
JpnⅢ・・・1着3,000万円以上 総額5,100万円以上
G格付けの賞金基準と同等になりました。こちらも後述する附則と絡むため後ほど説明します。
6.格付けの審査等
(3)その他
① 年間レースレーティングの算出において、委員会が特に認めた場合は、当該レース出走馬のうち、レーティングの高い上位4頭の馬のレーティングを用いて算出した数値を考慮する。
② 下表左欄に定める項目の変更を行う場合、各主催者は委員会に変更申請を行わなければならない。ただし、下表(1)から(7)・(9)の右欄に該当しない変更、(8)の変更ならびに工事等により一時的に実施場および競走距離を変更した競走が変更前と同様の実施場および競走距離となる場合は、報告とすることも可とする。
なお、下表左欄の変更項目のうち、右欄に該当する変更が生じる場合は、委員会の過半数の承認を必要とする。
(1)格付け *1 すべての変更 (2)競走種別 すべての変更 (3)性別 すべての変更 (4)実施時期 *2 当該節から前々節または次々節を超える変更 (5)競走距離 1,600m以上の競走:200m以上の距離変更 1,600m未満の競走:100m以上の距離変更 (6)使用馬場 ・芝、ダートの変更
・左回り、右回りの変更
・コース形態の大幅な変更(7)実施場 工事等による一時的な変更以外のもの (8)競走名 (9)負担重量 ・種類(馬齢・定量・別定・ハンデ)の変更
・競走成績による増減重量の変更*1 昇格の承認については、6-(1)ー③により、委員会の全会一致が必要
*2 実施時期は以下の節による第1節
・1月1日が水・木・金曜日および閏年の火曜日の場合、
1月1日から第2金曜日まで・1月1日が土・日・月・火(除く閏年)の場合、
1月1日から第1金曜日まで第2節から第51節
第1節直後の土曜日から直後の金曜日までを第2節とし、以降同様に第51節まで順次区分とする第52節
第51節直後の土曜日から12月31日まで
③ 競走名については原則として恒久的な競走名を使用しなければならない。ただし、不変箇所を除く名称における変更もしくは追加はこれを認める。
④ 新たなJpn格付けは、特別な場合を除いてJpnⅢ競走とする。
ただし、委員会が必要と認めた場合、JpnⅠ競走またはJpnⅡ競走とすることも可能とする。
こちらは前回と比較して③の内容が一部変更されました。
附則
附則
この要綱は、2023(令和5)年1月1日から施行する。ただし、改正後のダート競走Jpn格付要綱第5項第1号の規定は2024(令和6)年4月1日から適用する。
まとめ
2022年5月からの変更点をまとめると次のようになります。
- 2024年4月から一部格付けの賞金基準が上昇 5-(1)と附則より
- 変更申請や報告が必要な内容が具体化 6-(3)-③より
賞金については2024年4月から全てのJpn格付けで必要な賞金基準が上がります。1着賞金の変更前、変更後は次のとおりです。
カテゴリ | 格付け | 変更前1着賞金 | 変更後1着賞金 | 差額 |
---|---|---|---|---|
2歳 | JpnⅠ | 3,000万円以上 | 3,200万円以上 | +200万円 |
2歳 | JpnⅡ | 2,200万円以上 | 2,400万円以上 | +200万円 |
2歳 | JpnⅢ | 1,400万円以上 | 2,000万円以上 | +600万円 |
3歳 | JpnⅠ | 3,800万円以上 | 4,000万円以上 | +200万円 |
3歳 | JpnⅡ | 2,800万円以上 | 3,000万円以上 | +200万円 |
3歳 | JpnⅢ | 1,800万円以上 | 2,400万円以上 | +600万円 |
3(4)歳以上 | JpnⅠ | 4,100万円以上 | 5,000万円以上 | +900万円 |
3(4)歳以上 | JpnⅡ | 3,100万円以上 | 4,000万円以上 | +900万円 |
3(4)歳以上 | JpnⅢ | 2,100万円以上 | 3,000万円以上 | +900万円 |
2024年4月以降のダートグレード競走で必要な1着賞金、賞金総額が増加します。現在施行中の競走では古馬戦を中心に一部金額の不足が見られるため、来年4月以降は最低でもこの基準に合わせてくると考えられます。
下の表は2023年度(2023年4月~2024年3月)施行時点の1着賞金と比較した不足額です。
開催場 | レース名 | 区分 | 格 | 賞金 | 新基準 | 不足額 | 補足 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
門別 | 北海道スプリントC | 3歳 | JpnⅢ | 2,200 | 2400 | -200 | 2024年から3歳限定戦 |
船橋 | ブルーバードC | 3歳 | JpnⅢ | 2,000 | 2400 | -400 | |
大井 | 雲取賞 | 3歳 | JpnⅢ | 2,000 | 2400 | -400 | |
大井 | 東京盃 | 古馬 | JpnⅡ | 3,500 | 4000 | -500 | |
大井 | レディスプレリュード | 古馬 | JpnⅡ | 3,100 | 4000 | -900 | |
名古屋 | 名古屋グランプリ | 古馬 | JpnⅡ | 3,800 | 4000 | -200 | |
大井 | 東京スプリント | 古馬 | JpnⅢ | 2,700 | 3000 | -300 | |
川崎 | スパーキングレディーC | 古馬 | JpnⅢ | 2,500 | 3000 | -500 | |
名古屋 | 名古屋大賞典 | 古馬 | JpnⅢ | 2,500 | 3000 | -500 | |
名古屋 | かきつばた記念 | 古馬 | JpnⅢ | 2,800 | 3000 | -200 | |
金沢 | 白山大賞典 | 古馬 | JpnⅢ | 2,500 | 3000 | -500 | |
園田 | 兵庫女王盃 | 古馬 | JpnⅢ | 2,200 | 3000 | -800 | TCK女王盃を改称 大井→園田へ変更 |
変更申請の内容については、(6)使用馬場と(9)負担重量で具体的な内容が追加されました。
おわりに
以上、2023年平地競走格付けルール変更点について書いてみました。個人的には格付けの賞金基準が増額予定なのが気になり、地方競馬側の運営で負担にならなければとの懸念はあります。
ただいずれ国際格付けを得る段階になれば、遅かれ早かれ賞金面の増額は避けられないのでタイミングが少し早くなったと考えることもできるでしょう。
競馬ファンとしては賞金を増やしたことにより、ダートグレード競走へ魅力ある出走馬がより集まりやすくなればと思います。
参考資料
- 令和5年度重賞競走一覧
- ダート競走Jpn格付要綱
更新履歴
(2023/09/17) 不足額一覧表が一部誤っており修正しました。