百々書き置き場

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全日本的なダート競走の体系整備とダートグレード競走改善研究会

2023年2歳世代から「全日本的なダート競走の体系整備」が始まる影響でダートグレード競走を始め、地方競馬各主催者の競馬番組体系も大きく変わっています。最初の発表は2022年6月「3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備について」ですが、一部報道ではこのような内容も記載されていました。

四半世紀が経過し、様々な問題点が出たため、20年9月に「ダートグレード競走改善研究会」を立ち上げ、全日本的な視点で検討を重ねてきた。

デイリースポーツ「3歳ダート3冠競走創設へ 24年から羽田盃&東京ダービーがJpn1格上げで中央所属馬出走可能に」 2022.06.21より

www.daily.co.jp

今回のダート路線改革はダートグレード競走改善研究会が大きく関わっていると思われますが、この研究会に対して各種報道では説明がほぼありません。そこで現在わかる範囲でどのような研究会なのかわかる範囲で調べてみました。

 

各種資料の記載内容

各種資料で「ダートグレード競走改善研究会」(略称はDG改善研究会)がどのように記載されているかまとめてみました。報道発表以外の資料では全て地方競馬全国協会(NAR)に掲載されているものばかりです。

 

第三期競馬活性化計画 中間検証報告書

第三期競馬活性化計画 中間検証報告書

4 各取組の実施状況、成果、課題と今後の取組の方向性
4.1 競馬の魅力向上(強い馬づくり)に向けた取組
4.1.8 レース体系の整備及び地方有力馬の出走拡大
(略)

●課題と今後の取組の方向性 

DG競走は、地方競馬中央競馬の有力馬が対戦し、お客様にダート競走の魅力を最もアピールする競走であるとともに、優れたダート適性馬を選定し生産に還元するという重要な役割を持つものである。近年、地方競馬所属馬がDG競走で好走する例も見られるようになってきたが、

  • 地方競馬中央競馬の能力格差が大きく、その多くでJRA所属馬が上位を独占してしまうこと
  • DG競走と隣接して同条件の地区重賞競走が組まれている例があるなど、DG競走とその他の地方重賞競走の配置が体系として十分に整理されていないこと

などの課題があり、さらに地方競馬所属馬の出走状況を改善してお客様の期待に応えるため、以下に取り組む必要がある。

  • 現行の競走振興事業の効果を検証し、事業対象や実施方法について必要な改善を行う。
  • DG競走改善研究会」をJRAと共同で設置し、DG競走に相応しい有力馬の出走に向けた方策等をJRAと連携して検討していく。
  •  

第三期競馬活性化計画中間検証報告書 - 令和2年12月23日|地方競馬全国協会

 

令和3年度事業計画

令和3年度事業計画

Ⅱ 具体的な取組
5.地方競馬の活性化の推進
(3) 競馬の魅力を向上させるための競走番組の整備、充実
ダートグレード競走及びシリーズ競走の整備・充実
(略)
また、我が国のダート競走体系の中核をなすダートグレード競走について、主催者、JRA及び生産者団体等との連携・調整を行い、ダート競走振興会議の運営に主体的に取り組むとともに、日本グレード格付け管理委員会に参画して円滑な格付けを実施する。昨年度JRAと連携して設置した「ダートグレード競走改善研究会」において、ダートグレード競走の出走馬の充実と振興等を目的とした検討を行う。

令和3年度事業計画|地方競馬全国協会

 

令和3年度事業報告書

令和3年度事業報告書

Ⅱ.事業実施状況
5.地方競馬の活性化の推進
(3) 競馬の魅力を向上させるための競走番組の整備、充実
ダートグレード競走及びシリーズ競走の整備・充実
(略)
また、我が国のダート競走体系の中核をなすダートグレード競走について、主催者、JRA、生産者団体等との連携・調整を行い、ダート競走振興会議及び日本グレード格付管理委員会に参画し円滑な格付けを実施した。
さらに、令和2年度に主催者及びJRAと連携して設置した「ダートグレード競走改善研究会」において、ダートグレード競走の出走馬の充実と振興等を目的とした検討を行い、報告書を取りまとめ、今後報告書の方針に沿って競走体系の改善を推進することとした。

Ⅲ.各種会議の実施状況
3.地方競馬活性化会議の開催
(略)
ダートグレード競走改善研究会報告書(案)

令和3年度事業報告書|地方競馬全国協会

 

令和4年度事業計画

令和4年度事業計画

Ⅰ 事業運営の基本的な考え方
2.地方競馬をめぐる情勢と協会の対応
(略)
競馬の魅力向上については、中央馬と地方馬の能力格差の解消に向けて「強い馬づくり計画」を着実に推進するとともに、ダートグレード競走改善研究会における検討結果を踏まえて競走体系の整備等を着実に進めていく。さらに、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた上で、公正かつ安全・円滑な競馬開催への支援や競馬の魅力を伝達するための広報展開等をしっかり行っていく。


Ⅱ 具体的な取組
5.地方競馬の魅力の向上に向けた取組
(3) 競馬の魅力を向上させるための競走体系の整備と番組の充実
ダートグレード競走及びシリーズ競走の整備・充実
我が国のダート競走体系の中核をなすダートグレード競走について、主催者、JRA及び生産者団体等との連携・調整を行い、ダート競走振興会議の運営に主体的に取り組むとともに、日本グレード格付け管理委員会に参画して円滑な格付けを実施する。
昨年度主催者及びJRAと連携して取りまとめた「ダートグレード競走改善研究会報告書」の方針に基づき、ダートグレード競走の魅力を向上させるため出走馬の充実と3歳馬競走をはじめとする競走体系の整備を推進する。

令和4年度事業計画|地方競馬全国協会

 

第三期競馬活性化計画 検証報告書

第三期競馬活性化計画 検証報告書

3 各取組の実施状況、成果、課題と今後の取組の方向性
3.1 競馬の魅力向上(強い馬づくり)に向けた取組
3.1.6 競走体系の整備及び地方有力馬の出走拡大

ポイント

  • ダート競走においては競走体系の整備が不十分であることに加え、DG競走において中央馬に伍して戦える地方有力馬を送り込めていない状況
  • 全日本規模の統一されたダート競走体系の整備に加え、地方有力馬のDG競走への出走を誘導する取組や地方競馬全体として国際化を進める取組が必要

 

  • 地方競馬は我が国におけるダート競走の中心的役割を担っているが、全日本規模の統一された競走体系の整備が不十分であることに加え、ダート適性の高い馬が評価を得る機会となるDG競走に中央馬に伍して戦える有力馬を送り込めておらず、ダート競走に対する評価は、芝競走に比べて後れを取っている。
  • このため、令和2年度にJRA地方競馬が共同で「DG競走改善研究会」を設置し、DG競走における課題の整理と改善策の検討を行った。その結果、以下の課題が明らかとなったことから、今後、地方競馬一体となってこれらの改善に取り組み、芝とダートを両輪とする日本競馬の発展を目指す必要がある。
    • 特に3歳馬における全日本規模での競走体系が未整備であること
    • 中央馬の上位独占や地方有力馬の出走回避によるDG競走の魅力の低迷
    • 賞金の削減、国際的評価の低さ等によるDG競走の価値の低迷

 

5 課題と今後の取組(まとめ)

  • 特に競走体系の整備については、JRA地方競馬が共同で設置した「DG競走改善研究会」におけるDG競走における課題の整理と改善策の検討を踏まえて、今後の競走体系の枠組みについて公表したところである。今後、新たな競走体系の中で成果を出していくためには、老朽化した厩舎・調教施設の整備等による強い馬づくりの強化や、有力馬の出走奨励策等による有力馬同士が対戦する競走の実現、DG競走のより高い国際格付けの取得等を地方競馬一体となって進めていく必要がある。

 

第三期競馬活性化計画検証報告書 - 令和5年3月|地方競馬全国協会

 

人文書ファイル管理簿 企画部 競走企画課

人文書ファイル管理簿 企画部 競走企画課

NO. 大分類 小分類 保存期間区分 文書ファイル名 作成(取得)年度 保存媒体 保存期間 保存期間満了年度 備考
(略)
292 企画部 競走企画課 K3 ダートグレード競走改善研究会の開催について(第2回~第3回) 2020 紙 5年 2025
293 企画部 競走企画課 K3 ダートグレード競走改善研究会の開催について(第4回~第10回) 2021 紙 5年 2026

法人文書ファイル管理簿 企画部 競走企画課 - (2022.7.31現在)|地方競馬全国協会

 

令和4年度事業報告書

同資料では記載がありませんでしたので、活動自体は終了したと考えられます。

令和4年度事業報告書|地方競馬全国協会

 

資料から読み取れる内容

各種資料より読み取れる内容は次のとおりです。

 

概要

  • 立ち上げ時期:2020年9月
  • 設置者:JRAとNARが共同で設置
  • 目的:ダートグレード競走の出走馬の充実と振興等を目的とした検討

 

活動内容

  • 研究会を少なくとも第10回まで開催
  • 研究会は令和2年度(2020年4月~2021年3月)までに第2~3回、令和3年度(2021年4月~2022年3月)に第4~10回が実施された
  • 第1回研究会は資料に掲載されておらず、どのような扱いかは不明
  • 令和3年度(2021年4月~2022年3月)に報告書をとりまとめた

 

検討結果

公開されている範囲での検討結果は下記のとおりです。

  • 特に3歳馬における全日本規模での競走体系が未整備であること
  • 中央馬の上位独占や地方有力馬の出走回避によるダートグレード競走の魅力の低迷
  • 賞金の削減、国際的評価の低さ等によるダートグレード競走の価値の低迷

 

検討報告を受けた後の動向

  • 地方競馬一体となってこれらの改善に取り組み、芝とダートを両輪とする日本競馬の発展を目指す
  • 競走体系の枠組みを公表
  • 新しい競走体系の中で成果を出す

 

新たな競走体系の中で成果を出すために行うこと
  • 老朽化した厩舎・調教施設の整備等による強い馬づくりの強化
  • 有力馬の出走奨励策等による有力馬同士が対戦する競走の実現
  • ダートグレード競走のより高い国際格付けの取得
  • その他

 

まとめ

以上より、ダートグレード競走改善研究会がどんな組織なのか簡単にまとめると、ダートグレード競走を盛り上げるためにどのような課題や問題点があるのか洗い出す組織だったと考えられます。

結果、全日本的なダート競走の体系整備に繋がるわけですが、ダートグレード競走以外の部分については一部を除いて未だ公表されていません。2024年以降本格的に始まるダート改革で各地方主催者も大きく影響があると考えられるため、11月以降で各主催者の発表で何が出てくるか注目したいと思います。

 

参考資料