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JRA賞のルールブックを読んでみた 競走馬部門編

今年も残すところあとわずかとなりました。年明けに発表されるJRA賞の話題も少しずつ増える時期となりました。特に競走馬部門は注目する人も多いと思います。

そこで今回はJRA賞のルールブックに該当する「日本中央競馬会JRA賞表彰規則」と「日本中央競馬会JRA賞表彰実施細則」のうち競走馬部門に関する内容を読んでみましょう。

 

※紹介するルールは2023年1月時点の内容になります。

日本中央競馬会JRA賞表彰規則の一部

JRA賞について

JRA賞は年度毎に活躍した馬などをたたえる表彰制度です。部門として大きく分けると下記になります。

  • 競走馬部門
  • 調教師部門
  • 騎手部門
  • 馬事文化賞

今回はこのうち競走馬部門のみを説明します。

 

日本中央競馬会JRA賞表彰規則

JRA賞の概要を表すルールブックのようなものです。競走馬部門はこのうち第1章、第2章、第6章が関わります。

 

改正履歴

最終改正:令和4年12月1日理事長達第34号

最終改正は2022年12月になります。現在は長いため最終改正のみ表示されていますが、一番始めは1987年12月から数年に1度程度改正され現在に至ります。また、規則内は和暦表記のみで西暦表記・併記はありません。

 

第1章 総則

(目的)

第1条 この規則は、当該年度において特に優秀な成績を収めた競走馬、調教師及び騎手並びに馬事文化の発展に顕著な功績のあった者及び馬にJRA賞を授与してこれを表彰するため、必要な事項を定めることを目的とする

この規則の目的です。規則で大まかなこと定め、細かな内容は後述の細則で定められています。

 

第2章 競走馬に関するJRA賞

(競走馬に関するJRA賞

第2条 当該年度の中央競馬の競走(本会が勝馬投票券を発売する海外競馬の競走を除く。以下同じ。)における成績により、別表第1の左欄に掲げる部門ごとに、同表の右欄に掲げる馬に、JRA賞を授与する。

2 前項による受賞馬のうち、当該年度の中央競馬を代表する最優秀馬に、JRA賞年度代表馬賞を授与する。

3 第1項に規定する成績について、中央競馬の競走馬の場合には、日本中央競馬会競馬施行規程(平成19年理事長達第28号。以下「施行規程」という。)第15条第5項の地方競馬指定交流競走(以下単に「地方競馬指定交流競走」という。)であって理事長が適当と認めたもの及び理事長が指定する外国の競馬の競走について(平成7年理事長達第63号)に規定する外国の競馬の競走(以下単に「外国の競馬の競走」という。)の成績を含むものとする。

4 第1項及び第2項の授賞は、受賞馬の馬主に賞状及びトロフィーを、受賞馬の調教師、騎手、調教助手、厩務員及び生産者のうち第4条に定める受賞馬選考委員会が適当と認める者に賞状及び賞品を授与して行う。

第1項~第3項は対象成績、対象部門、対象レースの説明で大まかにまとめると次のようになります。括弧書きの内容は2023年の場合で年によって若干異なる場合があります。また、この内容に関わるルールが細則でも記載されています(後述)

たまにJRA賞JRAへ出走した馬のみ投票するべきとの声もありますが、ルール上はJRA所属馬ならば該当年に地方・海外の対象レースのみへ出走した馬も可能です。今年の場合、ウシュバテソーロやデルマソトガケにももちろん投票可能です。

第4項は関係者の授賞関連のルールです。下記の対象者に対して授賞が行われます。毎年1月下旬グリーンチャンネルでも表彰式は中継されますね。

  • 馬主
    • 賞状、トロフィー
  • 調教師、騎手、調教助手、厩務員、生産者のうち委員会が認める人
    • 賞状、賞品

 

競走馬に関するJRA賞の選定方法

(競走馬に関するJRA賞の選定方法)

第3条 受賞馬の選定は、中央競馬に関わる報道関係者のうちあらかじめ理事長が定める要件に該当する者の投票(以下「記者投票」という。)により行うものとする。

2 記者投票は、理事長が定めるところにより、各投票者が投票用紙に、JRA賞年度代表馬賞及び別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞についてそれぞれ1頭の馬名を記入して行うものとする。この場合において、受賞馬として適当と認めるものがないときは「該当馬なし」と記入するものとする。

3 次に掲げる記者投票は無効とする。
(1)別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞に関する記者投票において、当該各部門に係る賞の対象となる別表第1右欄に掲げる馬に該当しない馬に対してなされた投票
(2)理事長が定める要件を満たしていない投票

4 記者投票において、JRA賞年度代表馬賞について投票者数の3分の1以上の票を得た記者投票順位の第1位で、かつ、別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞のいずれかについて受賞馬として決定された馬は、JRA賞年度代表馬賞の受賞馬に決定する。

5 記者投票において、JRA賞年度代表馬賞について「該当馬なし」の投票が記者投票順位の第1位でかつ、投票者数の3分の1以上を占めたときは、受賞馬はないものとする。

6 記者投票において、別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞について投票者数の3分の1以上の票を得た記者投票順位の第1位の馬は、当該部門の受賞馬に決定する。

7 別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞のうち、記者投票において「該当馬なし」の投票が記者投票順位の第1位で、かつ、投票者数の3分の1以上を占めたものについては、受賞馬はないものとする。

8 第4項から前項までの規定により受賞馬又は受賞馬がないことが決定しない場合は、次条に定める受賞馬選考委員会が受賞馬を決定する。この場合において、JRA賞年度代表馬賞及び別表第1の左欄に掲げる各部門に係る賞ともに、その賞ごとの記者投票順位の第1位の馬(記者投票順位の第1位が「該当馬なし」の場合は第2位の馬)について受賞馬とするか否かを決定する。

競走馬部門の選定方法に関するルールです。

第1項は選定する方法の説明でJRA賞競走馬部門は記者投票によって決めます。

第2項~第3項は記者投票のルールの説明です。各部門毎に1人1票することが可能で、該当する馬がいない場合は「該当馬なし」へ投票することも認められています。また、対象外の馬へ投票した場合は無効となります。

第4項~第8項は各部門受賞馬の決め方が書いてあります。過去には条件が若干異なる年もありましたが、2023年の各部門・年度代表馬は次のように決めます。

  • 1位&全体の1/3以上の票数の場合、受賞
    年度代表馬の場合、各部門のいずれかの受賞馬に限る
  • 上記以外の場合、該当馬なしを除く1位の馬に対し、受賞馬選考委員会が受賞馬にするか判断

また、記者投票に関する内容は細則にも記載があります(後述)

 

受賞馬選考委員会

(受賞馬選考委員会)

第4条 JRA賞受賞馬の決定を行うため、受賞馬選考委員会(以下この条において「委員会」という。)を置く。

2 委員会の委員は8名以内とし、あらかじめ理事長が定める要件に該当する者のうちから、理事長が委嘱する。

3 委員の任期は1年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 委員は再任されることができる。

5 委員会の会議は、理事長が招集する。

6 委員会に委員長1名を置き、委員の互選により定める。

7 委員長は、会務を総理する。

8 委員会の決議は、委員の3分の2以上が出席した会議において、過半数の同意をもって行う。ただし、第7条第1項第1号に規定するJRA賞特別賞の推薦については、委員総数4分の3以上の同意をもって行うものとする。

9 委員会の庶務は、広報部報道室において処理する。

受賞馬選考委員会に関する説明です。まとめると下記になりますが、例によって細則でも記載があります(後述)

  • 人数:8名以内
  • 任期:1年、再任可
  • 委員長:1名
  • 決議:2/3以上が出席した会議で過半数
  • 特別賞の推薦:委員総数の3/4以上
  • 庶務:JRA広報部報道室

 

第6章 雑則

(その他)

第12条 この規則に定めるもののほか、JRA賞の表彰を実施するために必要な事項は、理事長が定める。

このルールに書いてあること以外は理事長が定めるとのことです。

 

附則

この通達は、昭和62年12月23日から施行する。

(中略)

附則(令和4年12月1日理事長達第34号)
この通達は、令和5年1月1日から施行し、改正後の日本中央競馬会JRA賞表彰規則の規定は、令和5年度分以後のJRA賞の表彰について適用する。

過去の附則ですが、全部引用すると長いため中間部分は省略しました。省略した部分についても施行時期と適用年度が書いてあります。

 

別表

別表第1(第2条関係)
最優秀2歳牡馬 2歳の牡馬及びせん馬のうちの最優秀馬
最優秀2歳牝馬 2歳の牝馬のうちの最優秀馬
最優秀3歳牡馬 3歳の牡馬及びせん馬のうちの最優秀馬
最優秀3歳牝馬 3歳の牝馬のうちの最優秀馬
最優秀4歳以上牡馬 4歳以上の牡馬及びせん馬のうちの最優秀馬
最優秀4歳以上牝馬 4歳以上の牝馬のうちの最優秀馬
最優秀スプリンター 1,400メートル未満の競走における最優秀馬
最優秀マイラー 1,400メートル以上1,600メートル以下の競走における最優秀馬
最優秀ダートホース ダートの競走における最優秀馬
最優秀障害馬 障害競走における最優秀馬

左欄は各部門名、右欄が各部門の説明となります。今年から新設された最優秀マイラーは1400~1600mが対象最優秀スプリンターは1399m以下が対象になります。

分類上だと最優秀スプリンターは高松宮記念スプリンターズS、あと一応サウジアラビアの1351ターフスプリントも含まれます。最優秀マイラー安田記念マイルCSはもちろん、1400mの阪神カップも一応対象となります。

 

以上、日本中央競馬会JRA賞表彰規則となります。

 

日本中央競馬会JRA賞表彰実施細則

JRA賞の細かなルールを定めるルールブックとなります。競走馬部門に関連するのは第1条~第4条となります。また、競走馬部門に関係なさそうな内容は(省略)と記載します。*2

目的

第1条 この細則は、日本中央競馬会JRA賞表彰規則(昭和62年理事長達第15号。以下「規則」という。)により行うJRA賞の表彰について、必要な事項を定めることを目的とする。

細則の説明が書いてあります。

 

用語の定義

第2条 規則における「当該年度」とは、規則第5章の規定を除き1月1日から12月31日までの間をいう。

2 規則第2条第3項の「地方競馬指定交流競走(以下単に「地方競馬指定交流競走」という)であって理事長が適当と認めたもの」とは、地方競馬指定交流競走であって、本会の競走馬登録を受けている馬が出走した重賞競走とされるものをいうものとする。

3 (省略)

第1項は年度の説明で、範囲は1月1日~12月31日となります。規則第5章とはJRA賞馬事文化賞のことを指し、前年11月1日~当年10月31日が範囲となっています。

第2項は地方交流競走の補足で重賞競走に限定される旨となります。ただ、重賞競走の範囲がどこまでなのかは明確にされておらず、ダートグレード競走のみなのか、2023年の神奈川記念のような1年限定で格付けのないレースも含むのか判断が微妙です。いずれにしてもJRA賞で投票対象になるかどうかは別の話ですが。

 

記者投票

第3条 規則第3条第1項に規定する理事長が定める要件に該当する者とは、次に掲げる者とする。

(1)中央競馬記者クラブに通算3年以上加入している者(会友を含む。)のうち、当該年度において年間を通じて中央競馬の取材を行った者。

(2)東京競馬新聞協会又は日本競馬新聞協会に加盟している競馬専門紙各社が自社を代表して投票させる者(1社当たり5名とする。)

2 規則第3条に規定する記者投票は、別記様式によるものとする。

3 規則第3条に規定する記者投票及び前項に規定する様式は、本会が指定する電子画面による投票をもって代えることができる。

4 記者投票の投票期間は、毎年度理事長が定めるものとする。

第1項は記者投票の対象者の定義です。平たく書くと次のどちらかに該当する人が投票することが可能です。記者クラブや会社へ所属することが前提のため、原則フリー記者に投票権はありません。

  1. 記者クラブ通算3年以上加入し、年間を通じて中央競馬の取材を行った記者
  2. 新聞協会加盟の専門紙各社毎に5人

記者クラブは各スポーツ紙や一般紙、アナウンサー等が該当します。記者クラブ通算3年以上で年間を通じた取材が必要ですが、1社辺りの制限はルール上は決まっていません。また、会友のように退職後も属する場合は投票することが可能です。*3

新聞協会加盟の専門紙とは競馬ブック研究ニュースなどのことで、1社辺り5人が投票権を得ます。各社の投票権の決め方は会社毎に異なると思われ、年によって投票権を持つ人が変わるケースもあります。また、退職後は投票権を得ません。

第2項~第3項は投票方式についての内容です。細則には様式が設定されていますが、2017年度の投票以降はインターネット上の電子投票へ切り替わりました。

第4項は投票期間の説明です。理事長が定めることとなっていますが、JRA年末開催最終日~年明け金杯前日までのようです。

 

受賞馬選考委員会

第4条 規則第4条第2項に規定する理事長が定める要件に該当する者とは、次に掲げる者とする。

(1)東京競馬記者クラブ代表2名

(2)民放競馬記者クラブ代表1名

(3)東京競馬新聞協会・日本競馬新聞協会代表2名

(4)関西競馬記者クラブ代表2名

(5)中央競馬関西放送記者クラブ代表1名

受賞馬選考委員会の構成です。特別賞を選定するのは記者投票の代表者といったことが分かります。各クラブや新聞協会は大雑把に次のような方と思っていいです。

近年ではクロノジェネシスが特別賞を受賞したり、マルシュロレーヌが選考されたものの落選したことでも有名ですね。

 

附則

この細則は、昭和62年12月23日から施行する。

(中略)

附則
この細則は、平成29年11月24日から施行し、改正後の日本中央競馬会JRA賞表彰実施細則の規定は、平成29年度分以降のJRA賞の表彰について適用する。

過去の附則の一覧ですが、こちらも長いため中間部分は省略しました。

 

おわりに

JRA賞競走馬部門だけでも様々なルールが定められていますが、少しでもお分かりいただければ幸いです。

競走馬部門は記者投票がほぼ全てですが、記者の考えや裁量がわかる機会の一つだと思います。投票結果や特別賞の判定は投票記者の考える傾向の発表会のようなものなので、来年1月上旬にどのような結果が発表されるか注目していきましょう。

また、今回はボリュームの都合上、競走馬部門のみを書きました。今回書けなかった中だと馬事文化賞はJRA賞でもあまり触れられていない印象があるので、いつかルールブックの説明を書いてみたいと思います。

 

参考資料

*1:定義はJRA公式サイト競馬番組一覧およびルールの競馬番組で別に定める事項などを参照

*2:実物には(省略)と書いておらずちゃんと内容が記載されています

*3:例えば、日経ラジオ社の場合だと白川次郎アナウンサーは退職後も会友として投票を行っていますが、舩山陽司アナウンサーは退職後は投票を行っていません