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日本グレード格付管理要綱を読んでみた

※この記事は2022年前半時点の内容です。最新版を知りたい方はGate J.等でご確認下さい。

 

※2023年版変更点は下記記事をご覧ください。

gachach.hatenablog.com

 

 


前回はアジアパターン委員会のグランドルールの内容を説明してきました。

gachach.hatenablog.com

その中で度々、国内の格付け機関として日本グレード格付管理委員会の文字を見かけたと思います。しかし、日本グレード格付管理委員会の資料はインターネット上だとほぼ見かけません。実際にどのようなルールとなっているのか見ていきましょう。2022年掲載時点での最新バージョンは2021年1月1日改正版になります。

日本グレード格付管理要綱とは

平たく言えば、日本グレード格付管理委員会が定めるグレード格付けのルールブックになります。日本がパート1国の仲間入りを果たしたのは2007年、その2年後の2009年度競馬番組から運用されるようになりました。

具体的には下記のような形式で記載され、毎年JRAから発刊される重賞競走一覧に掲載されています。重賞競走一覧はGate J.東京Gate J.大阪などで閲覧が可能です。

日本グレード格付管理要綱の一部

用語・略語

要綱内の略語を予め記載します。

委員会:日本グレード格付管理委員会

競馬会:日本中央競馬会JRA

ARF:アジア競馬連

IRPAC:国際格付番組企画諮問委員会(世界における格付け機関)、APCの直轄組織

WBRRC:ワールドベストレースホースランキング委員会

各主催者:地方競馬の主催者(大井、川崎、盛岡など) ※NARではありません

APC:アジアパターン委員会、アジア・オセアニア等の格付統括機関

 

日本グレード格付管理要綱

改正履歴は以下のとおりです。

2008(平成20)年10月31日
2009(平成21)年11月 6日
2010(平成22)年10月 7日
2011(平成23)年10月 6日
2012(平成24)年10月11日
2015(平成27)年10月 9日
2018(平成30)年 1月 1日
2019(平成31)年 1月18日
2021(令和 3) 年 1月 1日

 

目的

1.目的
インターナショナル・カタロギング・スタンダーズに掲載する平地競走について、グレードⅠ、グレードⅡ、グレードⅢおよびリステッドの適格性を審査することを目的とし、本要綱を定める。

日本グレード格付管理要綱の目的の説明です。G1~G3、Lの格付け管理がなされます。

 

格付管理委員会

2.格付管理委員会
前項の目的を達成するため、日本グレード格付管理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この基準に則って格付け審査を行う。委員は、日本中央競馬会(以下「競馬会」という。)2名(競走担当理事およびハンデキャッパー)、地方競馬全国協会2名(企画担当理事およびレーティング責任者)、日本軽種馬協会1名、アジア競馬連盟(以下「ARF」という。)日本代表の国際格付番組企画諮問委員会(IRPAC)委員1名、ARF日本代表ワールドベストレースホースランキング委員会(WBRRC)委員1名の合計7名とする。

委員会の構成説明です。内訳は次のとおりになります。

  • JRA競走担当理事
  • JRAハンデキャッパー
  • NAR企画担当理事
  • NARレーティング責任者
  • 日本軽種馬協会
  • ARF日本代表のIRPAC委員
  • ARF日本代表のWBRRC委員

ちなみにIFHAのHPを確認するとIRPAC委員WBRRC委員が掲載されていますが、JRA職員の方なので、実質JRA職員4名、NAR職員2名、日本軽種馬協会1名の組み合わせで考えて良さそうです。

 

格付対象競走

3.格付対象競走
格付けの対象となる競走は、中央競馬のオープン競走および地方競馬で行われるダート交流重賞競走のうち、競馬会および各地方競馬主催者(以下「各主催者」と総称する。)から申請のあった競走とする。

格付対象のレースの説明です。JRAだとオープン以上、地方だとダートグレード競走のうち申請があったレースに限られます。

 

グレードの定義

格付け

4.グレードの定義
(1)格付け
※括弧内は、インターナショナル・カタロギング・スタンダーズにおける表記
 ①グレードI競走(GⅠ競走)
  年齢別、競走距離別の最優秀馬を選定し、競走馬の生産の指標となる
  競走体系上最も重要な競走。
 ②グレードⅡ競走(GⅡ競走)
  グレードI競走に次ぐ重要な競走。
 ③グレードⅢ競走(GⅢ競走)
  グレードI競走、グレードⅡ競走以外のグレード競走。
 ④リステッド競走(L競走またはLR競走)
  (一)グレード競走と同格であるが、上記①から③の格付けを得られない
     重賞競走。
  (二)競走体系上グレード競走に次ぐ重要な中央競馬のオープン特別競走。
  ※LR競走
   リステッド競走のうち、外国調教馬が出走できない競走。

格付けの説明になります。ランク付けはG1>G2>G3>L=LRであることが分かりますね。

リステッドの(一)は2018~2021年までの葵Sのように新設重賞や重賞とだけで表記されたレースを表します。(二)は通常のオープン特別よりやや賞金の高いレースでキャピタルSプリンシパルS等が該当します。

LRはリステッド・リストリクテッド(Listed Restricted)の略称で日本では外国調教馬が出走できないJpn1~3が当てはまります。IFHAのHPにあるブルーブックでも確認することが可能です。

 

競走数

(2)競走数
GⅠ競走はGⅡ競走より少なく、また、GⅡ競走はGⅢ競走より少なくなければならない。

G1レース数>G2レース数>G3レース数にする必要があります。距離や馬場などのカテゴリー単位の制限は無いため、単純に全体数さえ合っていれば問題ありません。

 

格付基準

本賞金額

5.格付基準
(1)本賞金額
本賞金額については、競走種別・グレード別に原則として以下の金額を満たすものとする。
2歳
 GⅠ   ・・・1着 3,200万円以上 総額5,440万円以上
 GⅡ   ・・・1着 2,400万円以上 総額4,080万円以上
 GⅢ   ・・・1着 1,600万円以上 総額2,720万円以上
 リステッド・・・1着 1,000万円以上 総額1,700万円以上

3歳
 GⅠ   ・・・1着 4,000万円以上 総額6,800万円以上
 GⅡ   ・・・1着 3,000万円以上 総額5,100万円以上
 GⅢ   ・・・1着 2,000万円以上 総額3,400万円以上
 リステッド・・・1着 1,250万円以上 総額2,125万円以上

3(4)歳以上
 GⅠ   ・・・1着 5,000万円以上 総額8,500万円以上
 GⅡ   ・・・1着 4,000万円以上 総額6,800万円以上
 GⅢ   ・・・1着 3,000万円以上 総額5,100万円以上
 リステッド・・・1着 1,600万円以上 総額2,720万円以上

一応、Gレースとリステッドには年齢条件と格付け毎に賞金の最低基準が設けてあります。が、JRAの場合だとクリアしてくるので特に問題は無いでしょう。

ただし、各地方競馬主催者が今後申請する場合はここがネックになる可能性はあります。例えばTCK女王盃は2022年だと1着賞金が2200万円のため、G3基準には足りません。2022年のJpn1~3の1着賞金と比較すると古馬G2とG3がやや高めの設定な印象を受けます。

 

競走内容(レーティング)

(2)競走内容(レーティング)
競走種別・格付けごとに下表のレースレーティング数値を基準とする。

レースレーティングー覧(単位:ポンド)

格付け GⅠ GⅡ GⅢ リステッド
2歳 110 105 100 95
 (牝馬限定) 106 101 96 91
3歳・3(4)歳以上 115 110 105 100
 (牝馬限定) 111 106 101 96

※レースレーティング
 ①年間レースレーティング
  当該競走で上位4着までの馬のWBRRC公式レーティングの平均値をいう。
  なお、牝馬限定以外の競走において、上位4着までに牝馬が入着した場合には、
  4ポンドを加算して算出する。
 ②パターンレースレーティング
  「年間レースレーティング」の直近3年間の平均値をいう。
  ただし、2回しか実施されていない競走については、
  2年間の年間レースレーティングの平均値をパターンレースレーティングとして
  認める。

レースレーティングの基準一覧表と項目別の算出方法の説明になります。レースレーティング一覧は格付けと年齢・性別毎に基準が異なることがわかります。

WBRRC公式レーティングとはロンジンワールドベストレースホースランキング(LWBRR)やJPNサラブレッドランキング等で掲載されたレーティングのことです。99以下はJRAだと重賞競走・オープン特別競走レーティング、NARだとダートグレード競走レーティングから最高値を確認すれば、大体の数値は分かるでしょう*1

 

格付けの審査等

昇格

6.格付けの審査等
(1)昇格
競走の昇格(新たな格付けを含む。以下この項において同じ。)については、以下のとおりとする。
①各主催者より申請があった場合、委員会において当該競走を審査する。
②同様の競走条件下で最低2年間実施され、昇格する予定の年度に上記5-(1)の基準を満たし、かつ、パターンレースレーティング及び直近の年間レースレーティングが5-(2)の基準値を満たしていることを条件とする。なお、WBRRC公式レーティングが未確定の競走については暫定の年間レースレーティングを用いることができる。
③競走の昇格の決定は全会一致を条件とする。ただし、GⅠ競走への昇格および実施場もしくは馬場の変更を伴う昇格については、アジアパターン委員会(以下「APC」という。)における承認をもって、格付けの正式決定とする。

まず昇格するためには各主催者(JRAや大井など)から申請することが前提となります。レーティングや賞金基準を満たしたからといって自動では昇格しません

次に条件を全てクリアする必要があります。

  • 2年以上同条件で施行される
  • 昇格年度の賞金条件を満たす
  • パターンレースレーティングが基準値以上
  • 直近の年間レースレーティングが基準値以上
  • 日本グレード格付管理委員会で全会一致の承認を得る

ただし次のいずれかに該当する場合、APCの承認も必要になります。

  • G1への昇格
  • 競馬場の変更を伴う昇格
  • 馬場(芝やダートなど)の変更を伴う昇格

APCの昇格基準と比較するとレーティング面では同じですが、賞金面や全会一致の承認を得る等、いくつか条件が追加されています。

 

降格

(2)降格
競走の降格(グレードの取消しを含む。以下この項において同じ。)については、以下のとおりとする。
①GⅠ競走・GⅡ競走
年間レースレーティングが上記5-(2)の基準を2年連続して3ポンドを超えて下回った場合、委員会は各主催者に警告を発する。さらに、その翌年度においても3ポンドを超えて下回った場合、APCにおいて当該競走の降格が審査される。
②GⅢ競走・リステッド競走
年間レースレーティングが上記5-(2)の基準を2年連続して3ポンドを超えて下回った場合、委員会は各主催者に警告を発する。さらに、その翌年度においても3ポンドを超えて下回った場合、降格とする。ただし、競走条件の変更が提案された場合は、1年間猶予されるが、その年度の年間レースレーティングが基準を3ポンドを超えて下回った場合は、降格とする。
③上記①・②にかかわらず、上記5-(1)の基準を下回った場合は、降格とする。

基本的にAPCの降格基準と同じになります。例えば、フェブラリーS(G1)では年間レースレーティングが3年連続で112未満になるとAPCで降格審査される流れになります。

APCと異なる点ですが、G3・リステッドの降格回避案の「1年間猶予されるが、その年度の年間レースレーティングが基準を3ポンドを超えて下回った場合は、降格とする。」の部分が明示されています。

 

その他

(3)その他
APCにおいてGⅠ競走の降格が審査される際、年間レースレーティングの算出において、当該レース出走馬のうちレーティングの高い4頭のレーティングを用いて算出した数値が考慮される場合がある。
②新たなグレード格付けは、特別な場合を除いてGⅢ競走とする。GⅠ競走またはGⅡ競走とする場合にはAPCにおける承認を必要とする。
③競走種別、性別、実施時期、競走距離および負担重量等に大きな変更があった競走、または各主催者より自ら降格の申請があった競走の格付けについては、委員会の過半数の承認を必要とする。
④競走名については原則として恒久的な競走名を使用しなければならない。ただし、不変箇所を除く名称における変更もしくは追加はこれを認める。
⑤上記(1)・(2)にかかわらず、IRPACまたはAPCの合意事項により、競走の昇格および降格を判断する場合がある。

①、②、③の一部分、④はAPCのルールにも記載された内容です。

①はG1が降格審査の救済措置です。APCのルールにあった3歳クラシックの表記はこちらにはありません。3歳クラシック=G1の前提があるためでしょうか。

APCルールと同じく原則として最初はG3から始める内容になります。帝王賞は2022年現在LRであるため、G1へ昇格する際は特別な理由が必要になるかもしれません。

③の大部分はAPCルールにも記載があります。異なる点は自主降格の場合でも委員会の過半数の承認が必要になることでしょうか。

APCルールと同じです。例えば、ロンジンジャパンカップの太字に当たる部分のことです。

⑤のAPC・IRPACは上位機関のため、委員会が従う趣旨で考えてよさそうでしょう。

 

格付けの申請

7.格付けの申請
各主催者は、格付けの対象となる競走を行う予定の年度の前年9月末日までに、委員会に申請するものとする。なお、GⅠ競走への昇格および実施場もしくは馬場の変更を伴う昇格申請については8月第3金曜日までに完了するものとし、委員会で承認された競走はAPCに上申する。
委員会は申請された格付案を審査し、審査後は速やかに重賞競走の格付けを各主催者へ通知するものとする。

申請期限は9月末までに行う必要があります。

ただし、APCへ上申する下記の申請は8月第3金曜日までに申請完了させ、日本グレード格付管理委員会で承認→APCへ上申の流れになります。

  • G1への昇格
  • 競馬場の変更を行う昇格
  • 馬場の変更を行う昇格

そのため、仮に札幌記念をG1昇格させたい場合はレースが施行される直前に申請完了させなければなりません。また、帝王賞をG1昇格させたいケースではレース後だと他にレーティングを獲得できそうなレースがありません。事実上、帝王賞終了直後の年間レースレーティングの暫定値で判断を迫られるケースになるでしょう。*2

 

事務局

8.事務局
委員会に事務局を置く。事務局長は競馬会競走部番組企画室長の職にある者が当たるものとする。

事務局はJRA競走部番組企画室長になります。

 

要綱の変更

9.要綱の変更
本要綱を変更する場合は、委員の過半数の承認を条件とする。

要綱を変更する際の条件です。

 

附則

附則
この要綱は、2008(平成20)年10月31日から施行する。
附則
この要綱は、2009(平成21)年11月6日から施行する。
附則
この要綱は、2010(平成22)年10月7日から施行する。
附則
この要綱は、2011(平成23)年10月6日から施行する。
附則
この要綱は、2012(平成24)年10月11日から施行する。
附則
この要綱は、2015(平成27)年10月9日から施行する。
附則
この要綱は、2018(平成30)年1月1日から施行する。
附則
この要綱は、2019(平成31)年1月18日から施行し、改正後の日本グレード格付管理要綱(以下「改正後の要綱」という。)は2019(平成31)年1月1日から適用する。ただし、改正後の要綱第5項第2号の規定は2018(平成30)年1月1日から適用する。
附則
この要綱は、2021(令和3)年1月1日から施行する。

今までの施行・改正履歴が掲載されています。競馬番組の年度に置き換えると次の時期に改正があります。

  • 2009~2013の各年度
  • 2016年度
  • 2018年度
  • 2019年度
  • 2021年度

各改正によってレーティング等の昇格・降格手順は大きく異なります。東京大賞典のG1昇格が報じられた2010年当時のルールは現在と異なり、LRからG1へいきなり昇格することも制限はありませんでした。当時のルールについては後日書いてみましたのでご覧いただければと思います。

gachach.hatenablog.com

また、名称が途中から「日本グレード格付管理委員会」から「日本グレード格付管理委員会」に変更されました。送り仮名の「け」が省略されています。

 

おわりに

以上が日本のグレード制による格付けルールになります。前回の記事でも紹介しましたが、興味がある人は上位機関に当たるアジアパターン委員会のルール*3も読んでみるといいかもしれません。ニュージーランド・サラブレッド・レーシングのHPに関連資料*4と一緒に置いてあります。

 

参考資料

  • 令和3年度重賞競走一覧

 

更新履歴

  • (2022/09/20) 誤字修正、一部表記や言い回しを変更しました。
  • (2023/03/23) 最新版に関する内容を追記しました。
  • (2024/01/31) 2023年版に関する内容を追記しました。

*1:地方重賞(ダートグレード競走ではなく東京記念大井記念などJRA所属馬が出走できないレース)でもレーティングが付けられる場合もあります

*2:APCへ上申するタイミングと審査日によって使用するレーティングが異なり、年末時のレーティングを使用できるパターンも考えられるため取り消しました

*3:Asian Pattern Committee Ground Rules

*4:NZTR Publications