該当馬なし・・・、2014年まで顕彰馬記者投票得票数の一覧の下に掲載されていた言葉です。日本中央競馬会顕彰規則第3条第3項にはこう書かれています。
3 記者投票は、別に細則で定める投票用紙に、4頭いないの馬名を記載して行うものとする。ただし、顕彰馬として適当と認めるものがないときは、該当馬がない旨を記載する。
説明にはこう書いてありますが、実質白票と変わりありません。
2022年の投票でも投票者202名いる中で173票が該当馬なしへ投票されました。1人4票制のため、単純計算で43.25人が4頭全て該当馬なしを選択した状況と同じになります。
ただし、実際には4頭全て投票した記者は何人いるのか、また4頭とも該当馬なしへ投票した記者はどのぐらいいるのかはJRAから発表されたPDFだけでは分かりません。
そこで、前回も使用した顕彰馬記者投票名簿を使用して実際に記者が何頭投票しているのか実態調査を行います。
該当馬なしの条件
実態調査を始める前に該当馬なしに当てはまる条件を確認しましょう。上記以外に顕彰規則細則第5条第3項と第4項にはこう書かれています。
3 投票された馬名において同馬名を表記した場合は、そのうち1頭分のみ有効とし、その他を「該当馬なし」とみなす。また、4頭分ともに「該当馬なし」の場合は投票したものとみなし、当該年度の投票者数に数えるものとする。
4 規則第2条に規定する要件を満たしていない馬に対して投票があった場合は、「該当馬なし」と記載したものとみなす。
前者は同じ馬名を記入した場合は同馬名の2頭目以降を該当馬なしとして扱うと言うことです。顕彰馬記者投票結果一覧を見た限りだと同一馬名が書かれている投票者はいませんでした。もしかしたら予め置き換えられていたのかもしれません。
後者は投票期間対象外の馬を記入した場合です。過去にもいくつか事例があり、2012年の投票ではニホンピロウイナーを記載して無効票として扱われたケースもあります。しかし、運用上は該当馬なしとして扱うため、今回の調査も合わせていきます。
年別該当馬なしの票数
まずは年毎に該当馬なしがどのぐらい投票されているか確認しましょう。
2000年(試験投票)、2001~2013年(1人2票制)
年 | 投票者数 |
該当馬なし |
該当馬なし |
選定馬 |
---|---|---|---|---|
2000年(試験投票) | 127 | 63 | 49.6% | |
2001年 | 132 | 52 | 39.4% | |
2002年 | 137 | 59 | 43.1% | |
2003年 | 154 | 46 | 29.9% | |
2004年(過去) | 172 | 64 | 37.2% | タケシバオー |
2004年(現代) | 172 | 31 | 18.0% | テイエムオペラオー |
2005年 | 182 | 62 | 34.1% | |
2006年 | 185 | 83 | 44.9% | |
2007年 | 197 | 91 | 46.2% | |
2008年 | 186 | 54 | 29.0% | ディープインパクト |
2009年 | 197 | 111 | 56.3% | |
2010年 | 191 | 79 | 41.4% | |
2011年 | 186 | 30 | 16.1% | ウオッカ |
2012年 | 185 | 68 | 36.8% | |
2013年 | 184 | 28 | 15.2% |
基本的に選定馬がいる年は該当馬なしの票数が低い傾向にあります。ただし2013年は既存勢力のエルコンドルパサーやスペシャルウィークに加え、ブエナビスタやヴィクトワールピサが新規投票対象となった年でした。該当馬なしが28票のみにも関わらず選定馬がいないため1人2票では足りないことがわかります。
2014年~(1人4票制)
年 | 投票者数 |
該当馬なし |
該当馬なし |
選定馬 |
---|---|---|---|---|
2014年 | 195 | 133 | 68.2% | エルコンドルパサー |
2015年 | 196 | 104 | 53.1% | オルフェーヴル |
2016年 | 198 | 120 | 60.6% | ジェンティルドンナ |
2017年 | 207 | 176 | 85.0% | |
2018年 | 190 | 144 | 75.8% | ロードカナロア |
2019年 | 193 | 169 | 87.6% | |
2020年 | 196 | 173 | 88.3% | キタサンブラック |
2021年 | 203 | 218 | 107.4% | |
2022年 | 202 | 173 | 85.6% |
2014年からは1人4票まで投票が可能になりました。こちらも選定馬がいる年は該当馬なしの票数が低い傾向にありました。しかし、2020年はキタサンブラックが選定されたにも関わらず該当馬なしの票数が占める割合が高くなりました。この傾向はアーモンドアイが落選した2022年も続いています。
投票頭数別記者の人数
投票数が不足している記者、逆に票が余っている記者はどのぐらいいるのでしょうか?記者が実際に何頭投票しているか年別に人数を集計したので見ていきましょう。
2000年(試験投票)、2001~2013年(1人2票制)
年 | 0頭 | 1頭 | 2頭 | 選定馬 |
---|---|---|---|---|
2000年(試験投票) | 16 | 31 | 80 | |
2001年 | 9 | 34 | 89 | |
2002年 | 10 | 39 | 88 | |
2003年 | 2 | 42 | 110 | |
2004年(過去) | 8 | 48 | 116 | タケシバオー |
2004年(現代) | 2 | 27 | 143 | テイエムオペラオー |
2005年 | 7 | 48 | 127 | |
2006年 | 22 | 39 | 124 | |
2007年 | 16 | 59 | 122 | |
2008年 | 4 | 46 | 136 | ディープインパクト |
2009年 | 25 | 61 | 111 | |
2010年 | 14 | 51 | 126 | |
2011年 | 0 | 30 | 156 | ウオッカ |
2012年 | 14 | 40 | 131 | |
2013年 | 5 | 18 | 161 |
2頭フルに投票した記者は毎年6割ほど、1頭以上投票した記者は9割程度になります。逆を言えば2枠とも該当馬なしへ投票した記者が1割前後いました。
ただし、先にも説明したとおり、選定馬がいる年は2頭フルに投票する記者が増える傾向にありました。
2014年~(1人4票制)
年 | 0頭 | 1頭 | 2頭 | 3頭 | 4頭 | 選定馬 |
---|---|---|---|---|---|---|
2014年 | 6 | 13 | 21 | 28 | 127 | エルコンドルパサー |
2015年 | 0 | 9 | 28 | 21 | 138 | オルフェーヴル |
2016年 | 2 | 9 | 30 | 25 | 132 | ジェンティルドンナ |
2017年 | 5 | 17 | 35 | 35 | 115 | |
2018年 | 3 | 15 | 29 | 29 | 114 | ロードカナロア |
2019年 | 5 | 23 | 30 | 20 | 115 | |
2020年 | 7 | 25 | 26 | 18 | 120 | キタサンブラック |
2021年 | 19 | 18 | 27 | 34 | 105 |
4頭フルに投票する記者は毎年約5~6割、多い年だと7割になります。逆に4割程度は1人4票も使わないと言うことでしょう。1頭も投票しない記者は数名から多い年は1割程度と1人2票制の頃と比べると減少傾向にあります。
また1~3頭へ投票する記者はそれぞれほぼ同じ人数になり割合からすると1割前後になることが分かります。
推測になりますが、単純に同じ割合が続くならば1人6票で6頭フル投票する記者はおよそ3割、1人8票で8頭フル投票する記者は1~2割はいることが考えられます。
まとめ
どの年でも票数制限フルに使う記者が半分以上いることがわかります。中には4頭で足りている記者もいると思いますが、現状だと1人4票でも足りない記者の方が多いのかもしれません。
反面、オルフェーヴルやウオッカの年を除いて毎年1頭も投票しない記者が少数ですがいるのも事実です。
全て該当馬なしへ投票することに否定はしませんが、G1を7勝したディープインパクトやキタサンブラックが投票対象の年でもそのような記者がいることは疑問に思います。どのような馬なら顕彰馬としてふさわしいのか是非見解を聞いてみたいと私は思いました。
参考サイト・資料
- JRA公式サイト 2022年度投票結果
- 平成12年度顕彰馬選考投票結果(2000年)
- 平成13年度顕彰馬選考投票有資格者名簿最終結果(2001年)
- 平成14~16年度顕彰馬選考投票一覧(2002~2004年)
- 平成17~21年度顕彰馬選考投票者一覧(2005~2009年)
- 平成22~26年度顕彰馬記者投票結果一覧(2010~2014年)
- 平成27~30年度顕彰馬記者投票名簿(2015~2018年)
- 2019~2021年顕彰馬記者投票名簿