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日本中央競馬会顕彰規則と顕彰規則細則を読んでみた

JRA顕彰馬にも選定ルールが設けられています。ですが実際どのようなルールになっているのか目にした人は少ないと思います。そこで顕彰馬選定のルールブックとも言える日本中央競馬会顕彰規則、顕彰規則細則を見ていきましょう。

 

日本中央競馬会顕彰規則

顕彰馬や顕彰者(調教師・騎手)を選定するためのルールブックになります。2022年6月現在、最新版は2021年7月1日版です。

日本中央競馬会顕彰規則の一例

目的

第1条 この規則は、中央競馬の発展に特に貢献のあつた馬及び調教師又は騎手として中央競馬の発展に特に貢献があつた者について、その功績を讃え、顕彰するため必要な事項を定めることを目的とする。

顕彰馬、顕彰者を目的が書いてあります。JRA公式サイトの競馬の殿堂でも確認することができます。

 

顕彰の対象となる馬

第2条 この規則により顕彰する馬(以下、「顕彰馬」という。)は、本会の競走馬登録(日本中央競馬会競馬施行規程(平成19年理事長達第28号。以下「施行規程」という。)第28条及び第29条の規定による競走馬登録を除く。以下同じ。)を受けていた次の各号のいずれかに該当する馬であつて、かつ、顕彰馬の選定を行う年の前年の3月31日(以下「基準日」という。)までに本会の競走馬登録を抹消された馬(基準日の翌日において、本会の競走馬登録を抹消した日から起算して20年を経過していない馬に限る。)とする。ただし、本会の競走馬登録を受けてから中央競馬の競走(本会が勝馬投票権を発売する海外競馬の競走を除く。)に出走したことのない馬は、顕彰馬となることができない。
 (1) 競走成績が特に優秀であると認められる馬
 (2) 競走成績が優秀であつて、種牡馬又は繁殖牝馬としてその産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬
 (3) 前2号に掲げるもののほか、中央競馬の発展に特に貢献があつたと認められる馬

顕彰馬の選定対象馬が説明になります。制度上決まっていることは次の全ての条件を満たしている馬になります。

  • JRA所属の経験がある
  • JRA所属中にJRAの競馬場で出走経験がある
  • 前年~20年前までにJRA登録抹消した馬
    例:2022年の場合、2001年4月1日~2021年3月31日にJRA登録抹消した馬

各記者が選定の判断にする基準は次のどれかに当てはまる馬になります。

  1. 競走成績が特に優秀
  2. 競走成績が優秀+繁殖成績が特に優秀
  3. その他、中央競馬の発展に特に貢献がある馬

1999年までの選考委員会が選定した時代では、1では原則G1を3勝以上、2では1に準ずる成績+G1の勝ち馬頭数(牡馬5頭、牝馬2頭)が選考対象として求められていました。
現在はG1勝利数や産駒のG1勝利頭数の基準は無く、各記者の判断に任されています。

 

顕彰馬の選定方法

第3条 顕彰馬の選定は、中央競馬に関係する報道関係者のうち別に細則で定める要件に該当する者の投票(以下「記者投票」という。)により行うものとする。
2 記者投票の投票者数が、前項に規定する者の3分の2に満たない場合は、顕彰馬の選定は行わない。
3 記者投票は、別に細則で定める投票用紙に、4頭以内の馬名を記載して行うものとする。ただし、顕彰馬として適当と認めるものがないときは、該当馬がない旨を記載するものとする。
4 記者投票において投票者数の4分の3以上の票を得た馬を顕彰馬として選定する。

顕彰馬の選び方について書いてあり、まとめるとこうなります。

  • 顕彰馬選定は記者投票で行う(詳しい内容は顕彰規則細則に書いてある)
  • 投票者数が記者全体の2/3未満の場合、選定しない
  • 投票時に馬を4頭まで選ぶことができる。該当馬なしも選択可能
  • 記者投票で得票数が3/4以上の馬は顕彰馬に選定される

 

顕彰の対象となる者

第4条 この規則により顕彰する者(以下「顕彰者」という。)は、本会の調教師又は騎手の免許(施行規程第60条及び第63条の規定による免許を除く。以下「免許」という。)を受けていた次の各号のいずれかに該当する者であつて、かつ、顕彰者の選定を行う年の2月末日までに当該免許を有さないこととなつた者とする。
 (1) 調教師として成績が特に優秀であると認められる者
 (2) 騎手として成績が特に優秀であると認められる者
 (3) 前2号に掲げるもののほか、中央競馬の発展に特に貢献があつたと認められる者
2 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者については、顕彰の対象としない。
 (1) 禁錮以上の刑に処せられた者
 (2) 競馬関与の禁止又は停止の制裁を受けた者

調教師や騎手の顕彰者の対象になる人について書いてあります。また禁錮刑や競馬関与禁止や停止を受けたことがある人は対象外の説明もあります。

具体的な例では、田原成貴元騎手は競馬関与禁止などを受けたことがあるため対象にはなりません。

 

顕彰者の選定方法

第5条 顕彰者の候補者(以下「候補者」という。)の選考を行うため、顕彰者選考委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次の各号に掲げる委員長、副委員長及び委員をもつて構成する。
 (1) 委員長 理事長が氏名する常務理事
 (2) 副委員長 総務担当理事
 (3) 委員 理事(副委員長である理事を除く。)並びに総合企画部長、総務部長、広報部長、競走部長及び審判部長
3 委員長は、必要に応じて委員会の会議(以下「会議」という。)を招集し、会議を統括する。
4 副委員長は、会議の進行を行うほか、委員長が欠けたとき又は委員長に事故があるときは、委員長の事務を代行する。
5 副委員長が欠けたとき又は副委員長に事故があるときは、委員長が指名する委員が会議の進行を行う。
6 候補者の決定の決議は、委員長又は第4項に規定する委員長の事務を代行する者のほか、副委員長及び委員のうち4分の3以上が出席した会議において、出席者の4分の3以上の同意をもつて行う。
7 委員会は、前項に規定する決議の結果を理事長に上申するものとする。
8 委員会の庶務は、総務部総務課において処理する。
9 前各項に定めるもののほか、候補者の選考を行うために必要な事項は、委員会が別に定める。

第6条 理事長は、委員会が上申した候補者の中から、顕彰者を選定する。

調教師や騎手を選定するための方法が記載されています。顕彰馬とは異なり、選考委員会制度で出席者の3/4以上が同意すれば選ばれます。

選考委員会の内訳は基本的に次の8種になります。

委員長
  • 理事長が氏名する常務理事
副委員長
  • 総務担当理事
委員
  • 副委員長以外の理事
  • 総合企画部長
  • 総務部長
  • 広報部長
  • 競走部長
  • 審判部長

 

顕彰の方法

第7条 顕彰馬については、顕彰馬名鑑に、馬名、成績その他必要な事項を記載するとともに、絵画及びブロンズ像を作製してこれを顕彰する。
2 顕彰者については、顕彰者名鑑に、氏名、成績その他必要な事項を記載するとともに、ブロンズ盾を作製してこれを顕彰する。

顕彰選定された後の表現方法についての内容です。名前や成績などを記載、ブロンズ像や盾で表します。

 

顕彰者の取消し

第8条 理事長は、顕彰者が第4条第2項各号のいずれかに該当し、又は顕彰の対象として不適当と認めたときは、当該顕彰を取り消す。

顕彰者が禁錮刑や競馬関与禁止や停止を受けた場合、顕彰を取り消す内容です。

 

中央競馬メモリアルホール

第9条 第7条の絵画及びブロンズ像並びにブロンズ盾を関係資料とともに展示し、一般に公開するため、中央競馬メモリアルホールを設置する。
2 前項の中央競馬メモリアルホールは、競馬博物館内に置く。

競馬博物館に顕彰馬・顕彰者を一般公開する内容です。競馬博物館は現在東京競馬場内にあるため、機会がある方は訪れてみてはいかがでしょうか。

 

細則

第10条 この規則に定めるもののほか、顕彰に関し必要な事項は、別に細則で定める。

細かい内容は顕彰規則細則で決められます。推測になりますが、承認などのステップが異なるので小回りを利かせる内容はこちらになるかと思われます。

 

その他

第11条 総務部を担当する役員が常務理事である場合において第5条第2項第2号の規程の摘要については、同号中「総務担当理事」とあるのは、「総務担当常務理事」とする。
2 前項に規定する場合において、当該常務理事が第5条第2項第1号に規程する委員長であるときは、前項の規定により読み替えた場合における第5条第2項第2号の規定にかかわらず、理事長が氏名する常務理事又は理事をもって同項第2号に規定する副委員長に充てるものとする。
3 前項の規定により理事長が指名する常務理事を副委員長に充てた場合における第5条第2項第3号の規定の適用については、同号中「理事(副委員長である理事を除く。)」とあるのは、「理事」とする。

顕彰者選考委員会で役員が重複していたとき等の扱いの説明です。

 

附則(令和3年7月1日理事長達第10号)

この規則は、令和3年7月1日から施行する。

以前の附則もありますが、今の規則に沿っていない内容が多いため省略させていただきます。
改正後の施行日は2021年7月1日からです。2022年度顕彰選定はこの改正が適用されています。

 

顕彰規則細則

顕彰規則細則の一例

趣旨

第1条 この細則は、日本中央競馬会顕彰規則(昭和59年日本中央競馬会理事長達第19号。以下「規則」という。)により行う顕彰馬の選定および顕彰者の選考について、必要な事項を定めることとする。

顕彰規則細則がどういったものかの説明です。

 

顕彰馬記者投票

第2条 規則第3条による記者投票は、原則として毎年行うものとする。

記者投票は毎年行いますといった内容です。

 

投票資格

第3条 記者投票は、次の資格を有する者により行うものとする。
 (1) 中央競馬記者クラブに通算10年以上加入し、取材活動している者。(会友を含む。)
 (2) 日本競馬新聞協会又は東京競馬新聞協会に加盟している競馬専門紙各社が自社を代表して投票させる者(1社当たり3名までとする。)

どのような人が記者投票権を持つのかの説明です。

  1. 記者クラブとは日刊スポーツやサンケイスポーツなどのスポーツ紙に所属する記者のことを指します。また、ラジオNIKKEIやフジテレビ、KBS京都で実況するアナウンサーも含まれています。
    通算10年以上のため、途中で他社へ移籍しても記者クラブに属している限りは投票権は得られます。ただし、フリーライターなど記者クラブに属さなくなった場合は投票資格は無くなります。
    定年退職後も会友として記者クラブに属する場合は引き続き投票資格は保持したままになります。具体例では関西テレビ定年退職後の杉本清さん等が該当します。
  2. 競馬専門紙各社とは競馬ブック優馬日刊競馬などのことです。競馬エイトは競馬新聞協会に加盟していないため投票権がありません。

 

投票者の公開

第4条 投票委託者の社名・氏名については、投票結果の広報発表時に公表するものとする。

毎年顕彰馬選定記者投票の結果のページにある投票記者一覧のことです。氏名や社名だけ発表されているのは決まりに書いてあるためです。

 

投票方法

第5条 規則第3条に規定する記者投票は、別記様式によるものとする。
2 規則第3条に規定する記者投票及び前項に規定する様式は、本会が指定する電子画面による投票をもって代えることができる。
3 投票された馬名において同馬名を表記した場合は、そのうち1頭分のみ有効とし、その他を「該当馬なし」とみなす。また、4頭分ともに「該当馬なし」の場合は投票したものとみなし、当該年度の投票者数に数えるものとする。
4 規則第2条に規定する要件を満たしていない馬に対して投票があった場合は、「該当馬なし」と記載したものとみなす。

1から順に説明していきましょう。

  • 投票用紙の様式は指定されたものを使用する。
  • 投票は電子投票にしてもかまわない。
  • 同一馬名を記入した場合、1頭だけにして他の同一馬名は「該当馬なし」にする。
  • 4頭とも「該当馬なし」へ投票した場合でも投票者数にカウントする。
  • 投票対象外の馬へ投票した場合は「該当馬なし」と同等の扱いをする。

過去にはニホンピロウイナー等が無効票として発表された年もありますが、顕彰規則細則上だと「該当馬なし」にするのが正式処理のようです。

 

顕彰者選考基準

第6条 規則第5条に定める顕彰者選考委員会(以下「委員会」という。)は、次の各号の全てを満たす調教師を対象に顕彰者として相応しい者を選考する。
 (1) 中央競馬における通算勝利度数が概ね1,000勝以上
 (2) 管理馬がG1競走において延べ5勝以上
 (3) 年間最多勝利など特に顕著な成績を記録
2 委員会は、次の各号の全てを満たす騎手を対象に顕彰者として相応しい者を選考する。
 (1) 中央競馬における通算勝利度数が概ね2,000勝以上
 (2) G1競走において延べ10勝以上
 (3) 年間最多勝利など特に顕著な成績を記録
 (4) 免許を有さないこととなった日から原則として5年を経過

調教師、騎手の顕彰者対象の基準です。調教師は引退後即時選考しますが、騎手は引退後から原則5年経過することが条件にあります。2022年引退したばかりの藤沢和雄調教師は6月に顕彰入りを果たしました。騎手で言えば蛯名正義騎手は5年後の2026に選定される可能性が高そうです。

 

事務局

第7条 顕彰馬の選定および顕彰者の選考に関する事務局を総務部総務課に置く。

顕彰馬、顕彰者の事務局はJRA総務部総務課になります。

 

附則

1 この通達は平成16年3月10日から施行する。
2 平成16年に実施する記者投票においては、第5条第1項本文の規定に係わらず、別に定める投票用紙により、記者投票を実施するものとする。
3 平成26年に実施する記者投票においては、第5条第1項本文の規定に係わらず、別に定める投票用紙により、記者投票を実施するものとする。

現行の顕彰規則細則の初版は2004年版になります。また2004年と2014年は当時1人2票制でしたが、これらの年に限って1人4票まで投票することが可能な特殊投票用紙を使用することが出来ました。2015年以降も引き続き1人4票まで投票することが可能になり現在に至ります。

 

附則(平成30年2月1日)

この通達は、平成30年2月1日から施行する。

最新版は2018年2月1日改正版になります。

 

参考資料