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欧州パターン委員会の格付けルールを読んでみた

※この記事は2022年時点の内容です。最新版を知りたい方はBHA公式サイト等でご確認下さい。

 

 


以前アジアパターン委員会(APC)の格付けルールにあたるAsian Pattern Committee Ground Rulesを読んでみました。

gachach.hatenablog.com

今回は欧州版に該当するEUROPEAN PATTERN COMMITTEEや付随するGROUND RULES OF THE COMMITTEEを読んでみます。前回もそうですが、翻訳や読み取りに不安があるため、怪しいと思われる部分はコメント欄等でご指摘いただけると助かります。

今回は欧州パターン委員会で翻訳してみました。ただ、ヨーロッパパターン委員会やヨーロッパパターン競走委員会などいくつか翻訳方法があるため早速迷ってしまいますが…

 

 

最新版の確認

EUROPEAN PATTERN COMMITTEE(略称はEPC)の内容は、毎年、英国競馬公社(The British Horseracing Authority:BHA)で公開されています。

www.britishhorseracing.com

上記URL先の「Pattern and Listed race books」から「British Flat Pattern and Listed Races 2022」をクリックするとPDFの後半に掲載されていることが分かります。PDF自体は200ページ超えと大容量ですが、EUROPEAN PATTERN COMMITTEEに関する内容は10ページ程と全体に占める割合は多くありません。また、格付けルール以外にも英国競馬の重賞競走一覧や年間レースレーティングなども掲載されているため読み応えはあります。

https://media.britishhorseracing.com/bha/publications/Pattern_Listed_Books/British_Flat_Pattern_Listed_2022.pdf

欧州パターン委員会とは

1. 目的

1.1 欧州パターン委員会(以下、委員会)の役割は、年間を通じて様々な距離で最高の平地馬をテストするために、ヨーロッパ全域でパターンおよびリステッド競走の持続可能でバランスのとれたプログラムを維持・改善するための事項を検討し、必要に応じて決定を下すことである。
委員会は、委員会基本規則および欧州のパターン競走・プログラムの対称性を考慮し、優秀な馬の進歩に配慮するものとする。

1.2 当委員会は、欧州パターンにおいて、グループ3競走がグループ2競走より多く、グループ2競走がグループ1競走より多く、グループ3競走の合計数がグループ1競走とグループ2競走の合計数を上回るように、グループ競走のバランスを図ることを目的とする。

目的とパターン競走のバランスになります。グループ毎のバランスは式に表すと次のようになります。バランス自体はアジアパターン委員会と同内容ですね。

  • G3競走の総数>G2競走の総数
  • G2競走の総数>G1競走の総数
  • G3競走の総数>G2競走の総数+G1競走の総数

 

2. 会員および管理者

2.1 グループ1競走を開催する欧州各国は、自動的に委員会のメンバーとなる。
パターン競走またはリステッド競走を開催するすべての国は、欧州・地中海競馬連盟(EMHF)のメンバーであり、国際競馬統括機関連盟(IFHA)の繁殖、競馬、賭けに関する国際協定第6条に署名していなければならない。

2.2 委員会は、現在、次の加盟国を含む。英国、フランス、ドイツ、アイルランドで、それぞれの競馬当局が代表を務めています。英国競馬公社、フランス・ギャロ、ドイツ・ギャロ・サラブレッド生産競走協会およびホースレーシングアイルランド(HRI)です。委員会からグループステータスを与えられた競走を開催するその他のヨーロッパ諸国は準メンバーとみなされ、委員会の正式な会議にオブザーバーとして参加することができますが、投票権は持ちません。現在、以下の国が準メンバーとなっています。トルコ、イタリア、ノルウェースウェーデンデンマーク。EMHFの事務局は、委員会の正式な会合に代表として出席し、また、世界最優秀競走馬ランキング(WBRR)委員会のヨーロッパ共同委員長の協力を得て、当該競走のレースレーティングを作成しなければならない。

2.3 事務局は、委員会が随時合意する条件で、5年の任期で加盟国から提供される。

2.4 委員会は、IFHAのWBRR委員会が毎年作成するワールドベストレースホースランキングを利用できるようにする。委員会は、共同議長の1人を含む3人のWBRR委員会委員を毎年指名する責任を負う。各メンバーの任期は以下のとおりとする。任期は一度に3年を超え、委員会で別途合意されない限り、通常は1月31日に満了する。指名された委員は、さらに1期または複数期再任されることができる。9年を超える在任期間については、例外的にのみ適用されるものとします。

委員会の構成や任期等が書いてあります。構成国は次のとおりです。以前はイタリアも委員会の1つでしたが、今は準委員会へ降格しています。

EMHFのメンバーはHPによると次のとおりです。太字はEPCの委員会になります。

 

3. 業務内容

3.1 委員会は、質の高い血統の育成とサラブレッドの進歩が促されるような競走の枠組みをヨーロッパに提供することを目的としており、したがって、実施される勧告が、品種の形と進歩、およびヨーロッパのパターン競走・プログラムの長期的健全性に及ぼす影響を考慮しなければならない。

3.2 委員会の包括的な戦略は、質の高い競走と質の高い馬を奨励し、競争力のある、あるいは魅力的な競走を生み出すことを目的としたバランスをとるものである。

3.3 委員会は、IFHAの国際格付番組企画諮問委員会(IRPAC)の作業に貢献し、勧告を行い、IRPACの欧州パターン委員会の代表として、毎年1名のメンバーを全員一致で推薦します。

3.4 委員会は、会員または準会員、IFHAまたはEMHFから付託された問題を検討することができる。

3.5 委員会は EMHF 内の「新興国」を指導・奨励し、その発展、特にレーティングシステムの導入などの技術的な分野で援助する。
(注:ここでいう「新興国」とは、ブラックタイプの競走を持たないEMHFのメンバー国を意味する)

業務内容はザックリと書いてあります。ここで注目するのは「新興国」の扱いです。後半にも何回か登場するため、条件は覚えておいた方がいいかもしれません。

 

4. メンバーシップ

4.1 委員会は、次の委員で構成される。

4.1.1 各加盟国から1名ずつ、それぞれの競馬機関によって任命された代表者。

4.1.2 委員会議長は、加盟国によって全会一致で選出、任命される。委員長候補の指名は、加盟国が等しく行う。議長に指名された候補者については、委員会の業務と実際にまたは認識される利害の対立を生じさせる可能性のある役割、利害または関係を、任命前に委員会メンバーに開示し、委員会のメンバーが議長の任命について検討する際に考慮するものとする。

4.2 会長の任期は、一度に5年を超えないものとする。

4.3 議長は、加盟国代表の全会一致により承認された場合、2期目の再任をすることができる。

4.4 会長の任期は通常1月31日までとします。

4.5 議長の任期中に他の役割や役職に変更があり、それが実際の利害の対立を生じさせる可能性がある場合、委員会はその指名を継続すべきかどうかを検討する機会を与えられますが、その決定は加盟国による満場一致の決定となります。

4.6 例外的な状況において、委員は、委員会の最善の利益になると合理的に判断し、その決定が委員によって全会一致で承認された場合には、いつでも委員長のメンバーシップを終了させることができるものとする。

 

5. クォーラム

5.1 議事の処理に必要な定足数は、全委員とする。


6. 出席と投票

6.1 委員会の決定は、グランドルールの定めるところにより、全会一致または多数決で行われる。

6.2 委員会の投票において、各加盟国は1票を有する。ただし、グランドルールに従い、加盟国が自国開催の競走に関する提案を行った場合、提案国は投票権を有しない。委員長は、委員会の議題について投票権を有しない。

6.3 委員会は、委員の中から副委員長を指名し、指名された委員長が欠席した場合に委員長に就任することができる。

6.4 委員会議長の判断により、メンバー国及び準メンバー国から最大1名の追加代表者を含む他の個人を、適宜、会議の全部または一部に出席させることができるが、投票権はないものとする。

6.5 委員長又は事務局は、委員の事前承認を得た上で、特定の問題を検討するために小委員会を設置することができる。

6.6 WBRR 委員会のヨーロッパ共同議長及び EMHF 事務局長は、委員会の会合に招待されるものとするが、投票権は持たない。

 

7. 会合頻度

7.1 委員会は、少なくとも年に2回、及び委員会議長、事務局、または加盟国のうち3カ国が要求するその他の時期に、正式に会合を開くものとする。

 

8. 会議議事録および報告書

8.1 委員会は、委員会のすべての会合の議事及び決議について、出席者及び出席者の氏名の記録を含む議事録を作成させなければならない。

8.2 委員会の議事録は、全委員に回覧され、次の委員会にて合意(必要な場合は修正)されるものとする。

 

9. その他

9.1 委員会の職務権限または基本規則を変更する場合は、加盟国の全会一致で合意しなければならない。

9.2 メンバー国及びそれぞれの競馬機関は、この「付託事項」及び随時改正される「基本規則」がメンバー国に対して法的拘束力を持つことに同意する。加盟国は、これらの付託事項及び随時改正される基本規則に従って行われる委員会の決定に拘束されることに同意する。

9.3 委員会は、最大限の効果を発揮できるよう、自らの業績、構成、職務権限を適宜見直し、必要と考える変更を勧告するものとする。

以上が欧州パターン委員会の説明になります。アジアパターン委員会の説明と比べると詳細に書いてあることが分かるかと思います。

次からがいよいよお待ちかねの格付けルールの説明に入ります。ルール自体が長いため、アジアパターン委員会や日本グレード格付管理委員会のルールと異なる点を重点的に解説していきましょう。

 

委員会のグランドルール

1. 欧州パターン・リステッド競走に関する一般規則

すべての欧州パターン競走およびリステッド競走は、以下の規則に従わなければならない。

1.1 馬の生産地、調教地、所有地に関して、地理的な制約を受けないものであること。

1.2 レースタイトル内に恒久的な要素を持ち、それに接頭辞や接尾辞を付加することができること。

1.3 主にアベレージレースレーティングによって評価される出走馬の質によって、グループまたはリステッドのステータスを正当化する必要があります。

1.4 アベレージレースレーティングとは、ある競走が3年間に達成した年間レースレーティングの平均値です。年間レースレーティングは、WBRR委員会によって合意された、任意の年の1~4着馬の公式レーティングの平均値です。
また、オープン戦で1~4着に入着した牝馬は、年間レースレーティングを算出する目的でのみ、公式レーティングに4ポンドが加算される。
3年の間に競走が中止された場合、アベレージレースレーティングは使用可能な直近の3つの年間レースレーティングの平均値を用いて算出されます。
レースの出走頭数が4頭以下の場合、年間レースレーティングは「ゴースト」レーティングを使用して計算されます(詳細は後述)。

出走馬が3頭の場合:
足りない馬の「ゴースト」レーティングは、当該年度を含む直近3回の更新において、その競走で4着以内に入線した馬の中で最も低いレーティング、または当該競走のグレードに応じたアベレージレースレーティングパラメータより5ポンド低いレートのいずれか高いほうとする。

出走頭数が3頭未満の場合:
「足りない」馬のうち1頭については上記の通り、その他の馬については上記の通り、ただし該当するアベレージレースレーティングパラメータより7ポンド低いレーティングを使用し、いずれか高い方の数値を使用します。

 

以下のアベレージレースレーティングは、パターンまたはリステッドのステータスを得るために達成すべき標準的な競走です。

Group1 Group2 Group3 Listed
115 110 105 100

 

ただし、一部の競走については、以下のように別のパラメータが適用されます。

3歳・古馬以上の牝馬限定戦

Group1 Group2 Group3 Listed
110 105 100 95

 

2歳戦(牝馬限定戦を除く)

Group1 Group2 Group3 Listed
110 105 100 95

 

2歳牝馬限定戦

Group1 Group2 Group3 Listed
105 100 95 90

 

1.5 グループ1競走は、性別と年齢による斤量減を除き、斤量増や斤量減なしで行わなければならない。

1.6 セン馬は、2歳または3歳に限定されたグループ1競走を除き、すべてのパターン競走に参加することができる。

1.7 グループ競走やリステッド競走は、未勝利馬、または特定のパブリックセールで売買された馬に限定することはできない。

1.8 グループ競走やリステッド競走が2つ以上の部門に分かれることは許されない。

1.9 グループ競走およびリステッド競走は、ハンデ戦(ヨーロピアフリーハンデキャップを除く)にはできない。

1.10 グループまたはリステッド競走の標準的な登録料は、広告された賞金総額の2%を超えることはできない。

1.11 広告に記載された賞金総額は、レース開催日から90日以内に支払われなければならない。

状況によっては、委員会は、欧州のレースおよび/または繁殖に長期的に好影響を与えるよう設計された合意済みの戦略的プロジェクトを実施するために、1つまたは複数の規則を一時的に停止することを決定することができる。

アベレージレースレーティングといった聞きなれない用語が出てきました。これは年間レースレーティングの過去3年平均値なので、パターンレースレーティングと同じ意味を持ちます。

次にレース頭数が3頭以下の場合の年間レースレーティングの算出方法の解説です。足りない馬をゴーストと表現し、4頭になるまで補充して算出を行います。ゴーストは2021年から新しく導入された制度ですが、該当事例が無いため確認次第追記予定です。

1.5からはグループ競走やリステッド競走の条件になります。特徴的なのはハンデ重賞やリステッド競走ではハンデ戦が設定できない点でしょう。ヨーロピアフリーハンデキャップのみ例外的に設定可能で2022年現在格付けはリステッドになります。

 

2. 変更の定義

本グランドルールにおいて、委員会の審議が必要なパターン競走およびリステッド競走の変更とは、以下のとおりとする。

2.1 パターン競走のグループを変更すること。

2.2 パターン競走またはリステッド競走の距離、年齢・性別制限、開催日、開催地、馬場の変更。

2.3 パターン競走やリステッド競走の名称に含まれる恒久的な要素を変更すること。

2.4 グループ2またはグループ3のパターン競走の総賞金が50%を超える変更された場合。

2.5 新しいパターン競走やリステッド競走の導入。

2.6 既存のパターン競走やリステッド競走を削除すること。

2.4以外はアジアパターン委員会のルールと同じです。唯一異なるのは総賞金の扱いで、G2・G3の場合は賞金が大きく変わる場合は変更扱いになります。

 

3. 欧州パターン・リステッド競走の変更に関する規則

3.1 既存のパターン競走とリステッド競走の昇格、新しいパターン競走とリステッド競走の作成

パターン競走のグループ別格上げ、パターンへの新競走の追加、およびリステッド競走の新設については、以下の規則が適用され、例外的な状況においてのみ、委員会の全会一致の合意により免除されるものとする。委員会の過半数の承認を必要とする決定の場合、提案書を提出した国は投票権を有しない。同数の場合は、その提案を却下するものとする。

3.1.1 パターンへの昇格または新規追加の資格を得るには、少なくとも過去3年間、同様のレース条件、同等の賞金、同様の日程で競走が実施されている必要がある。(注:開催地および/または馬場が変わっても可)。

3.1.2 過去3年以内に一度でも実施されなかった競走は、過去2回の年間レースレーティングの両方が必要なパラメータを満たしている場合に限り、昇格または新規追加の申請が可能です。

APCでは過去2年間実施していれば対象になったことに対し、EPCでは原則過去3年の実施が必要になります。また、過去2回の救済措置が両年とも年間レースレーティングを満たす必要があることも異なります。

 

3.1.3 既存パターン競走の昇格

3.1.3.1 昇格の要件を満たす既存のパターン競走は、1年に1つのグループのみ昇格することができます。

3.1.3.2 当該競走が、直近1年間のアベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方が、該当するパラメータを上回っている場合、グループ1またはグループ2への昇格資格を有するものとします。

3.1.3.3 グループ1またはグループ2に格上げされた場合、既存のグループ1またはグループ2の競走に悪影響を及ぼす可能性のある衝突を伴う競走は、グループ1またはグループ2への格上げの対象にはならないものとする。

3.1.3.4 既にパターン化されている競走の昇格は、委員会の全会一致で承認されなければならない。(注:もしメンバー国が拒否権を行使することを選択した場合、それは競走計画上の理由に基づくものでなければならず、したがって委員会の全体的な目的を念頭に置いて行わなければならない)。

3.1.3.5 1つの国のパターン内で昇格される競走の数は、1年に最大2つまでとする。

APCと異なりかなり細かく制限があります。基本ルールに則る場合、例えばG3→G2、G2→G1と昇格する競走は1国につき年間1競走ずつしかできません。また委員会の全会一致が必要になります。

 

3.1.4 リステッド競走からパターンへの昇格

3.1.4.1 パターンへの登録条件を満たすリステッド競走は、グループ3競走としてのみ導入することができます。

3.1.4.2 該当する競走が、直近1年間のアベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方が、該当するパラメータを2ポンド以上(両方の点で)上回っている場合、グループ3への昇格資格を得るものとする。

3.1.4.3 リステッド競走のグループ3への昇格は、委員会の過半数によって承認されなければならない。

3.1.4.4 いずれの国も、上記の必要条件を満たす競走であれば、1年間に1つの追加競走をパターンに導入できる(ただし、委員会が全会一致で承認した例外的な場合を除き、1つを超えてはならない)。

3.1.4.5 準会員、または既存のリステッド競走をパターン競走に格上げすることを希望する他のヨーロッパ諸国からのパターン競走への新規申請の場合、委員会の過半数による承認が必要です。申請は、個々の長所に基づいて検討され、競走は、規則1.4に概説されているレースレーティングのパラメータを、直近1年間のアベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方で達成する必要があります。

基本的にL→G3への昇格で例外を除いて年間1国1競走のみが可能です。APCと異なり、アベレージレースレーティングと年間レースレーティングが基準値より2ポンド以上上回る必要があるためハードルは高いです。具体的には古馬戦では基準値100ポンドから2ポンド以上上回る必要があるため、G3昇格するためには実質102ポンド必要です。

 

3.1.5 新規リステッド競走

3.1.5.1 会員または準会員は、1年に1回のみリステッド競走を追加導入できる(ただし、委員会が全会一致で承認した例外的な場合を除く)。

3.1.5.2 上記を前提として、加盟国が新たに導入するリステッド競走の具体的なレース条件は、委員会の承認を必要としない。

3.1.5.3 準加盟国が新たにリステッド競走を申請する場合は、委員会の過半数の承認を得なければなりません。申請は、個々の長所によって検討され、レースは、規則1.4に概説されているリステッド競走のパラメータを、直近1年間のアベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方で達成する必要があります。

3.1.5.4 委員会のメンバーでも準メンバーでもないEMHFの新興国が、新たにリステッド競走を申請する場合は、委員会の過半数によって承認されなければならない。
また、過去3年間のうち少なくとも2年間は、年間レースレーティングとして規則1.4に概説されているリステッド競走のパラメータより5ポンドより下回っていないレーティングを獲得している必要があります。委員会のメンバーまたは準メンバーでないEMHFの国は、この条件のもとで最大1つのリステッド競走を許可される。

3.1.5.5 上記にかかわらず、委員会のメンバーまたは準メンバーでないEMHFの新興国が(委員会の過半数の承認を得た後)新たに創設できるリステッド競走の最大数に制限はないものとし、そのようなレースは、規則1.4に記載されているリステッド競走のパラメータを、直近1年間のアベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方で達成することが条件となります。

リステッド競走の追加は通常1年1競走のみ可能ですが、加盟国ならば条件は特にありません。ただし、準加盟国や新興国の場合は年間レースレーティングやアベレージレースレーティングの縛りがあり、審査対象となります。

 

3.2 パターン・リステッド競走の降格や削除

パターン競走およびリステッド競走の格下げ・削除には、以下の規則が適用される。

3.2.1 グループ1競走と3歳クラシック競走
・アベレージレースレーティングがパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、関連する競馬機関に警告書が発行されます。
・アベレージレースレーティングが2年連続でパラメータを2ポンドを超えて下回った場合、多数決で格下げを決定する。
・過去2年間の年間レースレーティングがそれぞれパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、関連する競馬当局に警告書が送付されます。
・過去3年間の年間レースレーティングがそれぞれパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、多数決で競走を格下げすべきかどうかが決定されます。

3.2.2 グループ2競走(ただし、3歳クラシック競走は除く。)
・アベレージレースレーティングがパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、関連する競馬機関に警告書が発行されます。
・アベレージレースレーティングが2年連続でパラメータを2ポンドを超えて下回った場合、多数決で格下げを決定する。
・過去2年間の年間レースレーティングがそれぞれパラメータを下回る場合、関連する競馬機関に警告書が送付されます。
・過去3年間の年間レーティングがいずれもこのパラメータを下回っていた場合、多数決で格下げが決定されます。
格下げされない場合は、翌年の年間レースレーティングが必要なパラメータを満たす必要があり、さもなければ自動的に格下げされます。

3.2.3 グループ3競走
・アベレージレースレーティングがパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、関連する競馬機関に警告書が発行されます。
・アベレージレースレーティングが2年連続でパラメータを2ポンドを超えて下回った場合、多数決で格下げを決定する。
・過去2年間の年間レースレーティングがそれぞれパラメータを下回った場合、関連する競馬機関に警告書が送付されます。
・過去3年間の各年の年間レースレーティングがパラメータを下回ると、自動的に降格されます。

3.2.4 リステッド競走
・アベレージレースレーティングがパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、関連する競馬機関に警告書が発行されます。
・アベレージレースレーティングが2年連続でパラメータより2ポンドを超えて下回った場合、自動的に降格されます。
・過去2年間の年間レースレーティングがそれぞれパラメータを下回った場合、関連する競馬機関に警告書が送付されます。
・過去3年間の各年の年間レースレーティングがパラメータを下回ると、自動的に降格されます。
・委員会のメンバーまたは準メンバーでない新興国のリステッド競走の場合、アベレージレースレーティングと年間レースレーティングの両方で、5ポンド低いレーティングパラメータが適用されます。

3.2.5 グループ1競走、または3歳限定のクラシック競走の格下げの可能性を評価する場合、委員会はさらに、競走で最も評価の高い4頭の馬と、1着から4着までの馬のレーティングを考慮することができます。

3.2.6 委員会は、年次総会において、関係国によるパターン競走またはリステッド競走の任意の格下げまたは削除について報告されなければならない。
ただし、このような場合、どの国も拒否権を持つことはない。

降格手順は基本的にAPCと同じです。ただし、条件はAPCよりもかなり厳しい内容となっています。主な違いは下記になります。

  • アベレージレースレーティングもチェック対象になる
    • 2ポンドよりも下回る場合は警告対象
    • 2年連続で2ポンドよりも下回る場合パターン競走かリステッド競走によって対応が異なる
      • パターン競走が降格対象の場合は協議・投票が行われる
      • リステッドの場合は自動降格する
  • 年間レースレーティングの降格値が3ポンドではない
    • G1の場合は2ポンド
    • それ以外は0ポンド
  • 年間レースレーティングで降格対象の場合の対応が一部異なる
    • G1はAPCと同様
    • G2は降格は協議・投票が無く、1年間の猶予が発生することが可能
    • G3・リステッドは自動降格する
  • 新興国のリステッド競走は5ポンド猶予がある

余談ですが、ニュージーランドパターン委員会(NZPC)のレポートによると、APCが新ルールを検討している内容に類似する部分があり、もしかしたらEPCの内容を一部踏襲しようと考えているのかもしれません。

 

3.3 パターン競走およびリステッド競走の変更と定義されるその他の修正

3.3.1 グループ1またはグループ2競走の距離、年齢、性別の制限または開催日の変更は、委員会の全会一致で承認されなければならない。

3.3.2 グループ3競走の距離、年齢、性別の制限、開催日の変更は、委員会の過半数の承認を得なければならない。一方、リステッド競走の変更は、委員会に通知しなければならない(下記3.3.5を条件とする)。

3.3.3 競馬場の変更、パターン競走やリステッド競走の名称の恒久的な要素の変更、グループ2または3のパターン競走の総額が50%を超える変更は、委員会の過半数によって承認されるべきです。

3.3.4 加盟国は、レース計画の根拠に基づいてのみ拒否権を行使すべきであり、なおかつ委員会の全体的な目的を念頭に置くべきである。

3.3.5 委員会のメンバーまたは準メンバーでない新興国で開催されるリステッド競走の場合、3.3.2 の変更は EMHF 代表が年次総会で委員会に提出し、委員会の全会一致で承認されなければならない。

APCと異なり、レース条件を変更する場合は少なくとも委員会の過半数の承認が必要で場合によっては全会一致が必要と条件が厳しいです。

 

4. 年齢別斤量とセックスアローワンス

委員会は、すべての加盟国および準加盟国において、同一の年齢別斤量およびセックスアローワンスを利用し、維持することを目的としています。

 

5. 変更の通知と実施

5.1 翌年度のすべてのパターン競走とリステッド競走の提案は、12月12日までに事務局に通知され、すべての加盟国と準加盟国に直ちに回付されなければならない。
この要件は、委員会の年次総会までに提案を適切に検討する時間を確保するため、厳格に遵守されなければならない。

5.2 第5.1項に従って提出された提案は、その後WBRR委員会の合意により公式レーティングを含むように更新され、年次総会の10日前までに事務局に返送されなければならない。委員会は、不完全な情報で返送されたパターン競走およびリステッド競走の提案を却下することができる。

5.3 変更は、グランドルールに従って受理された場合、当シーズンに実施されるものとする。

5.4 委員会が公表するまでは、パターン競走およびリステッド競走の変更案または承認について、メディアに対して公式発表をしてはならない。

提出時期、チェック時に使用するレーティング、実施時期などが記載されています。例年1月下旬頃協議されるため、締め切りが12月頃になっているのでしょう。

 

おわりに

以上が欧州パターン委員会の格付けルールになります。日本やアジア圏のアジアパターン委員会の格付けルールと比較すると詳細に書かれていることが分かります。また昇格や降格などの各ルールはアジアよりも厳しいとは感じました。

また、毎年1月下旬~2月上旬にはBHAのプレスリリースを通じて欧州パターン委員会よりパターン競走やリステッド競走の新設・昇格・降格などが発表されるため、興味がある人はチェックしてみてはいかがでしょうか。

www.britishhorseracing.com

 

参考資料

 

更新履歴

  • (2024/01/31) 最新版に関する内容を追記しました。